2023年5月17日水曜日

HELIOS-44-2@東京都庭園美術館

コバ塗りと絞り羽根の清掃をしたHELIOS-44-2を持って出掛けてみた。東京都庭園美術館の本館(旧朝香宮邸)は、普段は美術展が行われているのだが今回は建物公開ということで建物をじっくり見ることができた。本館三階にあるガラス張りの部屋「ウインターガーデン」も見学することができるのもこの期間だけのようだ。

Adobe Premiere Proで作ったスライドショーを使って動画を作成してみた。

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動画内で使用した画像(の一部)




































HELIOS-44-2 58mm F2.0 Nikon Z9
ピクチャーコントロール:[SD]スタンダード
すべて絞り開放(F2.0)で撮影

撮影した画像は現像時にNX Studioで若干のコントラストや色味など加工をしているが、レンズの風合いを残すために、ヴィネットや歪曲の補正はしていない。しかし、残念ながら半数以上の画像では、傾き補正とあおり補正を適用している。レンズの紡ぎ出した像を変形させるのは本意ではないが、手持ちできちんと被写体に正対して撮影することに失敗している画像が多くあり、今回は被写体の性質上、傾きやパースによる歪みが見栄えを台無しにしてしまうため、やむを得ず変形加工をした次第である。曇天と室内撮影のため、極端な逆光や斜めの入射光などの悪条件が無く、コバ塗りの効果が果たしてあったのかはっきり分かるような画像は無いが、今回撮影した画像のすべてにおいて気になるフレアやゴーストは見られない。ただ、よく思い返してみると序盤の方では絞りを操作していた記憶があり、フレアを消すために開放から1/3段程度絞ったものがあるような気がする。

2023年5月8日月曜日

HELIOS-44-2 + Kowa Anamorphic-16 24FPS動画

HELIOS-44-2と映写機用のアナモルフィックレンズ「Kowa Anamorphic-16」を使って動画を撮影してみた。4K 60FPSで撮影したものを、アスペクト比3.56:1・24FPSで出力している。バージョン1は再生速度を250%にして実速度にし、やっつけ感のあるBGMを加えたもの。バージョン2は60FPSで撮影したソースをスロー再生と逆再生の上、BGMを変更し細切れなカットを差し込むような編集を加えている。元々スロー再生することを目的に60FPSで撮影したが、逆再生・スロー再生でなんとも不思議な感じが出てきたので、緊張感のあるBGMとスロー再生で気持ち悪くなった収録音声を使い、やや不穏な雰囲気の動画にしてみた。

フロントコンバーター:Kowa Anamorphic-16(2倍)
52-39mmステップダウンリング 49-52mmステップアップリング
レンズ:HELIOS-44-2(58mm F2.0 フィルター径49mm)
M42-Nikon Z マウントアダプター
カメラ:Nikon Z9 

バージョン1

スロー再生をするつもりで60FPSで撮ったため、横パンの速度がやたら速いが、スローにしても速すぎた。

バージョン2(スロー・逆再生)


HELIOS-44-2の焦点距離は58mmで、フロントコンバーターにKowa Anamorphic-16を使った場合、フルサイズフォーマットではケラレが出てしまうためDXクロップで撮影している。DXクロップではHELIOSレンズの画角は87mm相当になりケラレは少なくなるが、逆光時にはフロントコンバーターの内面反射が目立つようで、映像の左右が白っぽくなってしまう。

ボケがよく観察できるように、ほぼ全てのカットは絞り開放のF2.0で撮影した。画面中央部は、アナモルフィックレンズ特有の縦に引き伸ばされた後ボケが見られ、画面両端ではHELIOSレンズの非点収差による像の乱れが顕著に現れており、円周方向に像が引き伸ばされて渦を巻いたように写っている。


今回はHELIOS-44-2の前面にKowa Anamorphic-16を取り付けてみる実験だったが、画角的に少し無理があり、相性は良くないことが分かった。HELIOS-44-2とアナモルフィックでググると検索結果には、絞り付近やレンズ後端に楕円形の絞りと縦張りのテグスを仕込む改造方法や、改造されたレンズによって撮影された動画リンクが出てくる。このレンズは元々、横長なフォーマットでは左右の周辺部のボケが縦に伸びたように写るので、アナモルフィックレンズで撮られた他の映像に混入されても違和感が少ないと思う。だから、このレンズに敢えて楕円形の絞りを入れる改造に意味があるのか?という疑問が生じるが、楕円形の絞りを入れたレンズで撮られた映像を見ると、画面中央部の後ボケも縦に伸びており、よりアナモルフィックを模したボケになっていることから、効果はあると言える。また、楕円形の改造絞りには青色やアンバー色の透明フィルターが使われている場合があり、これらはフレアの色味を着色するためのものらしく、極端な場合にはコバ塗りを剥がして着色するといった改造も行われるようである。写真の世界では収差やフレアなどの光学的欠陥は嫌われているが、映像の世界ではそういったものが珍重され、アナモルフィックレンズの奇妙なボケも、なくてはならない様式美の一つと考えられているのは、スチル側の住人からするとなんとも不思議である。

Kowa Prominar Anamorphic-16 前面から