2018年5月10日木曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その4)初回修理後 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED との比較


初期不良で修理をお願いしていたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの修理が完了したので、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDと比較しながらテストしてみた。

Nikon D850, 歪み補正:なし, ヴィネットコントロール:なし
ISO100, ロスレス圧縮RAW 14bit, Capture NX-D 1.4.6W
ピクチャーコントロール:[SD], 輪郭強調=0, 明瞭度=1(デフォルト)
アンシャープマスク:半径=2, 適用量=100
f=24mm/35mm/50mm/70mm

備考:
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、ズームリングを35mmの位置で撮影しても、EXIFの焦点距離は36mmになる。 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの35mm時よりも僅かに画角が狭いことからEXIFの焦点距離表示の方が正しく見え、どちらかと言うとズームリングのプリントがズレている。
絞りによるフォーカスシフトの影響を除外するため、一コマ度にライブビューでコントラストAFを行い、サイレントモードの電子シャッターで撮影している。

オリジナルサイズの画像をダウンロード(F5.6のみ 8256x5504pix)

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

 f=24mm
24mmでは左端に比べ右端の解像が悪い。1段絞り込むと開放で甘かった左端のコントラストが改善される。それ以上絞り込んでもほとんど変化が無い点は興味深い。

 f=36mm

 f=50mm
50mmでは右端が異常なピンボケになっている。左端の解像も悪い。F4.0時だけ、右端のボケが少ないが、このコマだけコントラストAFでの合焦結果が僅かに後ピン方向へズレたものと思われる。

f=70mm
テレ側の中央部の解像力は高くないものの、先代Gとは同程度であり、これは仕様の範囲と思われる。左側より右側の方がやや画質が悪いのは、この個体の片ボケと思われる。
今回のテスト画像では説明することができないが、この新型のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、テレ側近距離では画像がフレアっぽくなりコントラストが低下し、解像力も低下する。最近接撮影距離(CFD)では絞りによりピントが変動するフォーカスシフトが起こる。周辺部の低周波MTF向上のためにコマ収差の除去などを進めた結果、そのトレードオフとして近接撮影での球面収差が大きく残存するような収差バランスになったのだろうか。古い大口径レンズならともかく、非球面レンズや特殊ガラスを多数使い、強力なコンピュータを使って設計された近代的な高級レンズにしては、このフォーカスシフトは珍奇と言える。近接撮影で絞り込んで小物を撮影するような場合、ファインダーでの位相差AFでは確実にピンボケになるため、ライブビューでのコントラストAFを使う必要がある。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは近距離での収差変動が大きいように見え、用途によってはこのレンズが扱い辛いものとなる可能性はある。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

 f=24mm
先代のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは当時、立体感描写のために像面湾曲の補正よりも非点収差の除去を優先するという方針で設計されたという。像面湾曲が顕著で、ワイド側の周辺部はかなりの前ピンになる。そのため、ワイド側は遠距離の風景や建築などを相手にするのが苦手で、フルサイズ周辺部はピンボケになりシャープではない。1200万画素時代のボディならばF11まで絞れば中央部と周辺部の画質差はギリギリ目立たなくなるが、D800系以降の高画素機で使うには厳しいと言える。

f=35mm

f=50mm
一方で、50mm時には中央部からフルサイズ周辺部まで素晴らしい解像力を発揮する。コントラストでは単焦点レンズには劣るものの、コーナーでの解像力は50mm単焦点レンズに匹敵する。像面は完全に平坦ではなく、中央と端の中間(ミッドフレーム)では僅かな解像力の低下を観察することができる。

 f=70mm
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは元より万能レンズではなく、中~近距離でのポートレートやレポーティング用途に特化した仕様である。尖った性格のレンズではあるが、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRのように近接撮影で収差バランスが大きく変動するようなことは無く、そういう意味では扱いやすいレンズといえる。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR vs AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

f=24mm, F2.8
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの左端は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDよりもシャープで、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは右側の片ボケさえなければ周辺画質は向上しているものと見られる。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの周辺部はコマフレアによると思われるコントラストの低下がAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDよりも少ない。

f=24mm, F5.6
24mm F5.6では、中央部は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの方がシャープだが、左端はAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの方がシャープだ。

f=36/35mm F2.8

f=36/35mm, F5.6
やはりAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの右端はボケている。

f=50mm, F2.8

f=50mm, F5.6
50mm時は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの画面端での解像力の高さが際立っている。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは左右端とも画質が悪く、開放から2段絞ったF5.6でも改善せず、右端の異常なボケにも変化は無い。

f=70mm, F2.8

f=70mm, F5.6
70mm時はAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRとAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの画質は中央のシャープネスは及第点で周辺はともに画質は良くない。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの右端は片ボケという以上に、像が二重になっているようで汚い。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは現在2回目の修理に出している。この個体は全ての焦点距離で片ボケが見られ、とりわけ50mm時には左右とも周辺画質が異常である。
再修理から戻り次第、すぐにまたテストを行う予定。
次回:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR (その5)片ボケ 2回目の修理後

2018年5月1日火曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その3)初期不良の巻

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
実は、4月中旬に入手はしていたが、不良品の個体に当たってしまったので、まずは最初の修理が完了するまでの間、前置きの記事で時間を稼いでいた。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)
品物はAmazon経由で大阪の老舗ショップから購入した新品で、一見動作は正常なものの、片ボケと解像不良に加えコントラストAF時のピンボケがひどく、性能云々を評価できる状態ではなかった。片ボケのケースではメーカーとのやりとりが長期化し問題が泥沼化するのは必至で、ショップへの返品をまず考えたものの、ショップ側に責任が無いことは明白なので、泥沼化を覚悟の上でメーカーへ修理に出すことにした。

左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)


前玉はフッ素コートされているが、Amazonでお買い得だったハクバのXC-Proプロテクターを装着する。これも撥水防汚効果と低反射率(0.3%)をうたう。

ショップへの返品をしなかったのはこのレンズが品薄状態なのもあるが、片ボケや解像不良については元から想定内だったのもある。光学系が合格点でも、ズームレンズだとほぼ必ず位相差AFに関する調整は必要になる。いずれにせよ、初回のテスト後にはメーカーへ調整を依頼する必要があるとは思っていた。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRについては海外のレポート記事でも、手に入れたコピー(個体)が「偏心(Decentered)」していたという報告が数多くあり、性能評価についても賛否が大きく分かれていることから、新品の不具合は最も警戒していたのだが、予想が的中する形になった。

偏心を報告しているユーザーは海外に多く見つけられる。
https://www.cameralabs.com/nikon-24-70mm-f2-8e-vr-review/
「私がテスト用に持っていたレンズの最初のコピーが偏心していて、電磁絞りはレンズを止めるときに滑らかで安定した進行を保証しなかった」
「レンズのフロント/バックフォーカスは異なる焦点距離に対して1つのAF微調整値で効果的に補正できなかった」
「あなたが2500ユーロを要するプロフェッショナルグレードのレンズから期待すべきではない大きな迷惑」
「そして、私の2番目のコピーも偏っていることが判明しましたが、これはNikonサービスによって修正されました。」
http://srussenschuck.com/hands-on-review-nikkor-24-70-vr/
「この新しいNikkorズームは、強力なコンピュータ(MTF曲線で表現された)のレンズ設計による解像度向上が、適切な品質保証なしで迅速にどのように低下するかを示す例です。」

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの発売予定日は、元々は2015年8月27日だったが、「お客様により満足していただけるよう」という理由で発売は2か月後の2015年10月22日に変更された。「満足していただけない状態」とはつまり、設計上の目標品質を製造で達成することができない状態を指すものと考えられる。発売してから約1年後の2016年11月には、外観上の不具合を理由にリコールが行われ、この件ではニコンの製品出荷手順に疑問が生じることになったが、一方で対象になる個体ひとつひとつのシリアルナンバーが公開され追跡能力の高さは示されたものの、そのバランスの悪さに違和感を感じさせる一件となった。また、2017年11月の品不足アナウンスも記憶に新しい。発売後の様々なユーザーレポートの結果では、このレンズの性能については否定的な評価が多くを占めており、発売から2年半が経過した現在でも今回手に入れたような品質の製品が出荷されている事実を見ると、発売前に起こった問題が技術的に解決されたのかどうかが怪しくなり、海外サイトの中にはニコンが大量のバックオーダーを抱えていることが乱造の原因だとするものもある。

購入直後の状態
さて、まず購入直後の状態からいこう。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRとAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDで、各々ズームの中間あたりで一般的に最も画質が良いであろうと思われる50mm F5.6で撮影した画像を比較してみる。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
f=50mm F5.6
Nikon D850 ISO200

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f=50mm F5.6
Nikon D850 ISO200
各々コントラストAFで画像中央でフォーカスし、サイレントモード1で無振動撮影している。24-70E VRは右端が極端にボケており、この画像だけでもこのレンズが異常であることがはっきりわかる。VRはONになっているがOFFの場合も同様だった。左端は24-70E VRが良好でコントラストの高い画像になっている。もし右側もこれなら原田氏のお話と合致する。24-70Gはワイド端では遠距離が苦手なレンズだが、50mm時の両端はフレア気味でコントラストの低下はあるものの、非常に良く解像している。
テストでは24mm・50mm・70mmでF2.8~F11の画像を撮影したが、面倒なのでここでは他の画像は割愛する。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、どの焦点距離でも全般に画像右側の解像が悪く、70mmではコントラストAFでは後ピン、位相差AFでは前ピンとなり、撮影した画像はすべてピンボケだった。

長くなったので、一回目の修理の結果は次回で報告したい。
次回:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その4)