2023年3月22日水曜日

Kenko MC SOFT 85mm にて

前回のタムロンズームはあまりにも辛いレンズだった。今日はKenko MC SOFT 85mmで一回りしてきた。このレンズは本当に楽だ。最短撮影距離が80cmなので、目の前の撮りたいものは制約なくほとんど自由に撮れ、画質が安定しているのでまったく期待通りに写る。もちろん、ソフトフォーカスレンズなのでちょっと変わったレンズではあるが、あのタムロンに比べれば、圧倒的に現代の普通のレンズだ。
















Kenko MC SOFT 85mm F2.5, Nikon Z9
ピクチャーコントロール:[SD]スタンダード
アクティブD-ライティング:Auto
WB:5000K

2023年3月20日月曜日

TAISEI KOGAKU TAMRON ZOOM 95-250mm F/5.6(1965)

M42マウントの面白いレンズはないものか?と探していたところ、タムロンの古いズームレンズをメルカリで見つけた。マウントはTマウントの交換式で、入手したものはM42マウントが装着されている。

TAISEI KOGAKU TAMRON ZOOM 95-250mm F/5.6(1965)
900円(送料込み)メルカリ
モデル名:PZ-10II

ズーム位置 テレ側250mm および ワイド側90mm時
鏡胴のラベル痕はJCIIの輸出検査合格ラベルが、成り行きに任せ風化したものと見られる。

円形の三脚座(着脱不可)とM42カメラマウント

 35年くらい前だろうか。実は、これに似た物を持っていた。調べてみるとタムロンが1961年に発売した初のズームレンズ「95-205mm f/6.3」だったに違いなく、タムロンのHPにある写真にあるゼブラのピントリングに見覚えがある。当時も千円程度のジャンクとして手に入れた記憶があり、コンディションも悪かったが、とにかく酷い写りだった。今でも実家のどこかにあると思う。今回手に入れた「TAMRON ZOOM 95-250mm F/5.6」はその次に発売された望遠ズームのようだ。この年代のタムロンズームは、カビまみれで発掘されるのが普通だが、このレンズはフィルタースレッドに凹みがあるものの、保管状態が良かったと見られ、年代の割には光学系はきれいで、カビも無くクモリも少ない。だがしかし、これは非常に手強いレンズだ。要するに、光学性能が凄まじく悪い。

TAISEI KOGAKU TAMRON ZOOM 95-250mm F/5.6
90mm F5.6(解放)

90mm F5.6

90mm F8

250mm F5.6(解放)

250mm F8

オールドレンズはだいたい、現代の物とあまり変わらないくらい良く写るのが普通なのだが、このレンズは全く違う。画面の中心部だけがはっきり写り、周辺はめちゃくちゃだ。まるで、どこかのレンズが一枚、裏返しに組み立てられているのではなかろうか?と疑いたくなるような写りだ。だが、無限遠は出ているのでこれで正常なのだろう。しかしこれはもはや、味云々で済まされるレベルのものでは到底なく、とにかく酷い。1965年製とはいえ、カメラ用レンズでこんな性能が当時は許されたのだろうか。収差の大部分はコマ収差と見られ、そこに非点収差も加わっているようで、物凄い写りになっている。開放から一段絞ってF8で撮影すると良像範囲がやや広がるが、とても実用になるレベルではない。この年代でズームレンズは珍しかっただろうことは分かるが、同年代の単焦点レンズが非常に良く写ることを考えると、当時の人々はこれを一体何に使うことができたのだろうか?と甚だ疑問に思う。最短撮影距離が2.5mなのが何よりも辛く、これでは構図も被写体も限られる。そんな訳で、この手強いレンズで、いかに頑張って撮るか?という戦いである。いい天気なので、早速出かけてみよう。

まずは、もう一度画質のチェックをする。中央から周辺にかけて急激に像が滲んでいく。なんとも気持ちの悪い写りだ。
90mm F5.6
250mm F5.6


TAMRON ZOOM 95-250mm F/5.6 作例


視線が中央に拘束される。不思議な写りではあるが、どうにも気持ち悪い。
90mm F5.6

画面下の桜の木が構図の主題だが、画面中心部にピントがありどこを見ていいのか分からない。
90mm F5.6

このあたりは然程違和感が無い。成功か。
90mm F5.6

90mm F5.6

ズーム中間 F5.6

90mm F5.6

画面中央からやや下の黄色の花に注目したいが、ピントが中央のためやや違和感がある。
ズーム中間F5.6

手前の丸い草のかたまりにピントを合わせたが、構図を整えると中央から外れて写りが悪くなってしまった。
250mm F5.6

手前の桃の花と奥のスカイツリー。ピント位置を変えて2枚撮影。
250mm F5.6

250mm F5.6

この構図なら、周辺の悪い部分は分からない。
ズーム中間 F5.6

少しアンダー目の露出でそれなりに良い雰囲気はあるが、やはりなんか変だ。
90mm F5.6

ズーム中間 F5.6

普通のレンズなら、後ボケが見どころになる構図だが、これは汚い。
90mm F5.6

現場の被写体と光線の具合がとても美しかった。雰囲気は良いが、良く見るとピントが中心部だけに来ていてどうにも変だ。
ズーム中間 F5.6

これは美しい。被写体と光線状態に助けられている。
90mm F5.6

手前の草というか花にピントを合わせたつもりだが、ピント面がはっきりせず、どこを見ていいのか分からない。
90mm F5.6

これはまあ、なんかきれいだ。
90mm F5.6

90mm F5.6

後ボケは滲んでいてきれいだが、前ボケの水面反射が狂ったように騒がしい。全体では画像処理でボケを模倣したイラストのような雰囲気がある。
90mm F5.6

露出アンダー気味で撮影。これはなんかきれいだ。
90mm F5.6

なんとも言えない画像。周辺のボケが、普通に悪い方向に作用している。
90mm F5.6

こういう写真だといえば別に違和感は無い。手前の瓦にピントを合わせたはずだが、ピント位置に解像感が無く、どこにピントを合わせたのか分からない。
ズーム中間F5.6

これはこんな写真だと思えば別に違和感もない。
90mm F8
逆光の水面。絞り開放で撮った方はフレアがきれいだ。
90mm F8(たぶん)

90mm F5.6
共通データ
Nikon Z9, M42-Zマウントアダプター使用
ピクチャーコントロール:[SD]スタンダード
アクティブD-ライティング:AUTO
ホワイトバランス:5000K固定

「弘法筆を選ばず」というのを、英語では"A bad workman always blames his tools." (腕の悪い職人はいつでも道具のせいにする) と言うそうである。カメラやレンズにも同じ事が言えようが、物事には限度がある。固定焦点の写ルンですやPEN-EEでも良い写真が撮れることは知っている。あれはあれで、制約が良い方向に働いて余計なことを考えずに構図やシャッターチャンスに集中できるのだが、このレンズは違う。画質の悪さや最短撮影距離の短さなどの制約が悪い方向にしか働かない。個性の強いレンズをじゃじゃ馬などと形容する場合もあるが、このレンズはもはやハンドルが固定された自転車のようなものだ。手強いという表現では生ぬるい。被写体を前にして、思った構図で撮ることができないという不自由さはいかんともし難いものがある。もしも遭難し、無人島でこのレンズ一本しかない状況になったら?などと考えると、なんとも恐ろしいレンズだ。