2021年5月10日月曜日

海岸にて

星を点像として写すための目安のひとつに「500÷焦点距離」というものがあるそうだが、一般にはこれでは長すぎると言われているようだ。日周運動による星の移動量は、北極星付近では小さく黄道付近では大きくなり、同じ焦点距離でも星像のブレ量は構図によって異なってくる。Z7IIの画像は長辺方向に8256ピクセルで、24ミリレンズの水平画角が約73度であることから計算すると、画像上での星像の移動量は最大で1秒間に0.466ピクセル分となる。


15秒間の露光では約6.9ピクセルのブレが生じる計算になる。実際の画像上で、黄道付近にあるプレアデス星団を拡大してみると、星像の移動量はだいたいそんな感じだ。

画像上での星像はもともと数ピクセルの大きさがあり、どのくらいまでのブレを点像と見なすかを定量的に言うのは難しいが、24ミリレンズの場合、露光時間はこれの半分程度が望ましいかもしれない。ISO感度は3200が限界であるように思われ、きれいな点像を得るにはさらに開放F値の明るいレンズが必要だろう。







2021年2月28日日曜日

ニコンおもしろレンズ工房(1995)

「 ニコンおもしろレンズ工房」は1995年に発売されたFマウント用の簡易レンズセットで、「ぎょぎょっと20(Fisheye Type 20mm)」「ぐぐっとマクロ(Macro 120mm f/4.5)」「どどっと400(Tele 400mm f/8)」の3本が一つの箱に収められている。「ふわっとソフト(Soft 90mm f/4.8)」は、「ググっとマクロ」の光学系から後群の凹レンズ取り除き、前群の結像レンズを前後ひっくり返して組み替えることにより実現する。「さらにぐぐっとマクロ」は「ググっとマクロ」の光学系をフォーカスチューブの前方へ移動させ、繰り出し量が大きくなるように組み立てる方法に付けられた名前だが、実質「ググっとマクロ」と同じである。「マクロ」と「ソフト」が同じ鏡筒であることや、組み替え後の状態にも変な愛称が付けられていることが本キットの構成を分かり辛いものにしているが、鏡筒の数としては「魚眼」「マクロ兼ソフトレンズ」「望遠」の3つである。


ニコンおもしろレンズ工房(1995)
8,800円(メルカリ)

「どどっと400」だけは既に一本持っているが、今回フルセットを入手することができた。すべての付属品がきちんと元箱に収められた状態で、当時物のパンフレットやステッカーも同梱されている。

元箱

おもしろレンズ工房は2000年にマイナーチェンジされたものが販売された。パッケージのデザインもこれとは異なり「Nikon おもしろレンズ工房」の文字のほかに「Fun・Fun・LensSet」とも書かれている。2000年型では各レンズの鏡筒に焦点距離と口径比および「NIKON TECHNOLOGIES INC.」が白文字でプリントされている他、どどっと400の構造が組み立て式から沈胴式に変更されているようで、前玉もクモリが生じないタイプに変更されているという。

ぎょぎょっと20(Fisheye Type 20mm f/8)

焦点距離:20mm/レンズ構成:2群3枚/口径比:F8/最短撮影距離:1m(ピント位置1.6m)固定/画角:約153度/重量:約235g

正式な魚眼レンズではなく画角は153度となっている。ドアスコープに似た前面が平らな肉厚の凹レンズが前玉に使われており、魚眼レンズ風のディストーションを楽しむことができる。良像範囲が広く、思ったよりもシャープで非常に良く写る。コーナーでは像の流れが見られるものの、倍率色収差や逆光でのゴーストも見られない。写りが良いだけに固定焦点なのが残念だが、接写リングを入れることで近接撮影もできる。



レンズとFTZの間に接写リング「K1」(約5.7mm)を入れて撮影。

左下をよく見るとわかるが、この画像だけフォトショップで人を消した。他の画像については撮影時のまま。




ぐぐっとマクロ(Macro 120mm f/4.5)

焦点距離:120mm/レンズ構成:2群3枚/口径比:F4.5/最短撮影距離:0.64m/撮影倍率:約1/3倍(さらにぐぐっとマクロ時1/1.4倍)/画角:約20度/重量:約300g

マクロというだけあって、近接時の周辺画質の良さに感心する。


構成枚数が少ないのでコントラストが高く色もきれいだ。


通常の組み立て状態で無限遠撮影ができる。ディストーションはほとんど感じられない。ものすごくシャープかといえばそうではないが、少なくとも43-86ズームよりはずっと良く写る。


周辺光量落ちが見られるが、シンプルな光学系で紡ぎ出された癖のない素直な像といった印象。


手前の枯れ草と水面が美しい。焦点距離の割には超望遠で撮ったような強い圧縮効果が感じられる。

ふわっとソフト(Soft 90mm f/8)

焦点距離:90mm/レンズ構成:1群2枚/口径比:F4.8/最短撮影距離:0.4m/撮影倍率:約1/2倍
/画角:約28度/重量:約300g

「ぐぐっとマクロ」の後群の凹レンズを取り外し、2枚玉の前群をひっくり返して鏡筒に取り付けた状態がこの「ふわっとソフト」である。ソフトレンズは、ピントの最良位置では像の芯を取り巻くボケが大きくなり、ピント合わせが難しい。EVFの拡大表示を使って像の芯をしっかり観察することができるのはEVFの利点で、ミラーレスのZではソフトレンズの難しいピントも簡単に合わせることが出来る。画像を拡大してみると、このレンズはその「像の芯」がシャープであることがわかる。


光の玉が美しい。独特のボケ。



このレンズのソフト効果が強すぎる場合は、絞りを入れることで加減ができる。開発者の方によると、F6程度がおすすめだという。

ふわっとソフト 90mm f/4.8 絞り開放
ふわっとソフト 90mm f/6.0 (対物絞り15φ)

どどっと400(Tele 400mm f/8)

焦点距離:400mm/レンズ構成:2群4枚/口径比:F8/最短撮影距離:約4.5m/画角:約6度/重量:約500g

左が以前手に入れた「どどっと400」、右が今回手に入れた物。1995年型のどどっと400は経年劣化により前玉の貼り合わせ面にクモリが生じているものが多く、今回手に入れた物も残念ながらクモリが生じていた。貼り合わせレンズを分解するのは非常に難しいため、修理はほぼ不可能だが、2000年型のどどっと400はクモリが生じないと言われている。


クモリのためコントラストが低い。





2021年2月15日月曜日

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sにて

ZマウントのNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの光学性能は、これまでのFマウント50mmレンズとはまったく異次元のレベルだ。ニコンは2018年にZシリーズボディと共に、こんな凄いレンズをいきなり出してきたわけだが、それはつまり1959年から続いてきたFマウントの呪縛が、光学性能の追求においていかに大きな足枷になっていたかを示している。















1980年代、一眼レフのAF化の際に大口径化させたマウントを、そのままデジタル一眼レフカメラに引き継ぐことができたキヤノンやミノルタなどに対し、マウント変更を行わずにAF化を乗り切ったニコンは、デジタル一眼レフにもそれを引き継いだ。センサーサイズがAPS-Cだった初期のニコン機では、マウント径やフランジバックについて取り沙汰されることはあまりなかったが、センサーのフルサイズ化と高画素化に伴い、Fマウントの交換レンズの光学性能はだんだん苦しくなっていくのだった。ボディがD800世代になると画素数は3600万画素に達し、ニコンは推奨レンズリストなるものを公開したものの、実際には画面周辺部まできちんと解像することのできるFマウントレンズはほとんど存在せず、高画素の恩恵を画面の隅々にまで享受できるのは一部の望遠系単焦点レンズやマイクロニッコールなど限られたものだけになった。Fマウントの終焉を決定付けたのは、高画素化に対応したとして2015年に更新された大三元ズームのひとつ「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」に他ならないだろう。このレンズは前モデルのGタイプから8年後、その間に開発されたED非球面レンズや高屈折率レンズなどの高度なテクノロジーをすべて投入し、満を持した形で鳴り物入りで登場したが、その無残な光学性能と杜撰な品質管理*はニッコールの看板に泥を塗る結果になった。この失敗は、強力なコンピュータを使って高度に設計された最新レンズが適切な品質保証が行われないとどのような結果になるかを内外へ知らしめ、2015年当時、Zマウントシステムはまだ開発の初期段階にあったであろうが、マウントの大口径化とフランジバックの短縮化という要件に加え、生産現場におけるこれまでとは桁違いの品質管理の必要性が課題に上がっただろう。これに合わせ、今日に見られる海外への生産拠点の移行と技術の集中・国内工場の一部閉鎖など、デジタルカメラ市場の縮小とニーズの変化へ向けた大改革へと動き出したのも同じ頃だったのではなかろうか。ここ数年のニコンの奮闘の成果が着実に実を結んでいることは、今日のZレンズの光学性能を見るや手に取るようにはっきりと分かる。これらのZレンズや第二世代のZボディはすべてタイランド拠点で生産されている。