2009年1月31日土曜日

フィルムのデジタル化 CanoScan 8800F vs スライドコピア

フィルムをデジタル化する場合の方法についてこの1年間研究して来たが、概ね結果が出た。

ハーフ判
CanoScan 8800Fの最高解像度4800dpiでは高精細な画像を取り込むことはできない。L判サイズ印刷用程度なら十分だが、それ以上は無理。D80とベローズ・スライドコピア、マイクロニッコール55mm F3.5との組み合わせで複写する方法により、A4印刷にも十分な極めてシャープな画像が得られる。
撮像素子がフルサイズである
D700の場合には、マイクロニッコール55mm F3.5をBR-2リングでベローズ先端に逆付けすることによりちょうど2倍相当の倍率となりまた、像面湾曲の影響による周辺画質の低下を回避できる。これでD80の場合と同様、画面周辺部まで極めてシャープな画像が得られる。

135判
CanoScan 8800Fは、最大解像度4800dpiで読み込むことで辛うじてA4印刷も可能なある程度シャープな画像が得られるが、ハイライトの飛びや暗部の潰れが起こりやすく、輝度差のあるフィルムでは諧調表現に不満がある。D80とベローズ・スライドコピア・マイクロニッコール55mm F3.5で複写する方法では、これよりもずっとシャープな画像が得られる。フルサイズのD700の場合、近距離収差補正機構のないマイクロニッコール55mm F3.5では、像面湾曲により周辺画質に問題が生じる。AFマイクロ60mmF2.8Gを用いることで、画面周辺部まで極めてシャープな画像が得られるが、等倍以上に倍率を上げることができないため、枠が写りこんだりフレーミングがシビアになったりして利便性に欠ける。利便性を考慮すればCanoScan 8800Fを使うことになるだろう。

ブローニー
CanoScan 8800Fを使えば、6x7判・2400dpiで30MPのスキャン画像が得られ、A3印刷にも十分なシャープな画像が得られる。最高解像度の4800dpiでスキャンし、30MPに縮小すれば、僅かながら更にシャープな画像が得られる。ハイライトの飛びや暗部の潰れが起こりやすく、輝度差のあるフィルムでは諧調表現に不満がある。
デジカメでネガを複写する方法ではブローニーの高精細画像を生かすことができないが、思ったより実用的な画像が得られる。

参考画像(ハーフ判ネガの場合)

D80+ベローズPB-5+スライドコピアPS-2+マイクロニッコール55mm/3.5
全体画像 2592x3872(3.56MB) の中央部分拡大


CanoScan 8800F 4800dpi
上と同じ部分の拡大

CanoScan 8800Fでハーフ判スキャンその2

前回の続きである。CanoScan 8800Fでハーフ判ネガをスキャンしたが、ボケ気味に見える。ネガキャリアに挟まずに原稿台ガラス面に直置きして比較してみた。残念ながら、何ら違いは無い。ハーフ判に関してはネガをデジカメで複写した方が遥かにシャープだ。ライカ判についてはまだテストしていないが、この分だとA4印刷用のスキャンが実用になるかならないか、といったところだろう。

全体画像
PEN-F zuiko 38mmF1.8
DNPセンチュリア100
2592x3872 pix


ネガキャリア使用

ネガのベース面を下にし、ガラス面に直接置いてネガキャリアで押さえたもの

ネガの乳剤面を下にし、ガラス面に直接置いてネガキャリアで押さえたもの
(スキャン後鏡像に加工)


CanoScan 8800Fでハーフ判スキャン

CanoScan 8800Fでハーフ判フィルムをスキャンしてみた。予想通り、2コマ1組としてしか認識されない。左右のどちらか一枚を指定し、手動で1コマづつ範囲指定して取り込むしかない。
CanoScan 8800Fの画像はかなり不満。スキャン時のピント面がおかしいのか、細部はボケボケだし、粒状感もまったくない。最大読込解像度の4800dpiでも、ハーフ版フィルムの凝縮された情報を読み取るには、このスキャナの性能は完全に不足している。おそらく、ハーフ版の情報を引き出せるフィルムスキャナは市場に存在しない。なぜなら、フラットベッドではないフィルム専用機や、業務用の大きなスキャナの目的は、そもそもフィルムの粒状感を嫌うがために使用される、より大きなフォーマットのフィルムをスキャンすることを目的としているからだ。粒状感は一般に嫌われ者であり、粒子まで解像する性能のスキャナは市場では意味がないはずで、性能の最大は粒子を解像する寸前でいい。しかし、135判の高感度フィルムやハーフ判を好む俺にとっては、粒子に埋もれて実際には写っていない部分こそが大事なわけで、細部の奥行きを感じるためには、粒子までしっかりプリントする必要がある。もちろんドライバの粒状感低減機能はOFFにしているが、いかんせんこのスキャナに粒子を十分読み取るまでの性能はない。もちろん、ブローニーの場合ならこのスキャナで十分だ。原稿が大きいので読取解像度が低くても印刷に必要な画像サイズは得られるし、そもそもブローニーでは粒状感を出す必要がない。
D80とマイクロニッコール・スライドコピアで複写する方法では、粒子のざらつきまでちゃんと写る。この方法で取り込んだネガは粒子がボケずに見え、A4で印刷しても十分に精細感があり、アナログプリントで言う「引き伸ばしボケ」のような甘い印象が無い。今後、ネガキャリアの調整や原稿面ガラスの撤去等の方法でピント調整をしてみて、改善できるかどうか研究していくことしよう。

全体画像
PEN-F zuiko 38mmF1.8 DNPセンチュリア100
2592x3872 pix



CanoScan 8800F 2592x3872サイズ指定
2592x3872 pix (1.50MB)


D80+ベローズPB-5+スライドコピアPS-2+マイクロニッコール55mm/3.5
2592x3872(3.56MB)

2009年1月30日金曜日

CanoScan 8800Fでブローニー(6x7)スキャン

スライドコピアでフィルムを複写するのをいい加減に止めようと思い、フィルムスキャナとしてCanoScan 8800Fを導入。早速、RB67で撮ったモノクロネガをスキャンしてみた。出力サイズは指定せず、指定した解像度で読み取るようにした。1200dpiで、6x7ネガをD700で複写したのと似たようなピクセル数になる。ネガを複写したものより、CanoScan 8800Fの方がシャープで安心した。なかなか良い感じだ。A4か六切なら1200dpiで十分だ。
さて、どこまでいけるのだろう?2400dpiでは、ただ拡大されただけのようにも見えるが、1200dpiでのスキャン画像と同じピクセル数に縮小すると、1200dpiよりもシャープ。4800dpiでは画像サイズが大きくなりすぎ、そのまま使うことは無いだろうが、2400dpiと同ピクセル数に縮小すれば、2400dpiでスキャンした画像よりも僅かながらシャープになり、A3・300dpiでインクジェット出力するには十分な画像が得られる。これ以上の解像度もドライバで指定できるが無意味。試しに6400dpiでやってみたが、ボヤボヤのでかい画像になるだけで実用性は無い。(スペック上は最大4800dpi)
この機種の実用読取解像度の範囲は1200~2400dpi程度と思われる。4800dpiでは僅かに違いがあるが、画像サイズに見合う情報量は無いので、スキャン後にサイズを縮小するのが正しい。
ブローニーの場合、原稿サイズが大きいのでA3出力にも十分な画像が得られるが、135判の場合は、A4程度の出力が上限になるかもしれない。

CanoScan 8800F(Amazon:¥22,188)

全体画像
マミヤRB67プロ, セコールNB127mm/F3.8, F11 1/250秒

ライトボックスにネガを置き、ガラスで押さえてD700+マイクロニッコール60/2.8Gにて複写
6x7のアスペクト比に合わせ、両端をトリミングした画像(3468x2832 pix)の中心部320x240pix

CanoScan 8800F 1200dpi
スキャン画像 3072x2508 pix(1.65MB) の中心部320x240pix

CanoScan 8800F 2400dpi
スキャン画像 6144x5016 pix(4.68MB) の中心部320x240pix

CanoScan 8800F 6400dpi
スキャン画像 16384x13376 pix(17.6MB) の中心部320x240pix

2009年1月28日水曜日

RB67のテスト撮影・初めてのACROS

RB67のテスト撮影に出かけた。重いカメラだが、荷物はこれ一つなので大丈夫だ。大きな三脚はご免なので小型三脚の代わりにクランプポッドをバッグに入れる。レリーズと露出計も。RB67は面白いカメラだ。引き蓋を抜かないとレリーズできないようになっていたり、フォーカスが前板繰り出しの蛇腹なのに、自動絞りとレンズシャッターのチャージやレリーズが、ちゃんとボディ側と連動するという、この複雑な機構に関心する。見た目が蛇腹なので、無限遠なんて適当なのかと思えば、ちゃんと距離計があり、蛇腹最短で無限遠になるように作られている。ミラーショックも無く、希望すればミラーアップ操作もできる。こんなにも古くて、使い込まれているにもかかわらず、各部の操作にはどこにもガタや不具合がない。あえて言うならフィルムバックのモルトが溶けているのと、レボルビングのグリスが固いぐらいだ。あれこれ関心しながらフィルム一本を撮影。今回初めてACROSというフィルムを使った。135判なら微粒子フィルムは無用だ。だが6x7なのでせっかくだからISO100の微粒子フィルムを使ってみた。
 話がそれるが、プレスト以前のネオパンはベースの青紫色が濃く、ネガの濃度が分かりにくかった。このため、写真を始めた頃は、ベースの色が薄いトライXを好んで使っていたが、1986年にネオパン400プレストが発売された時、一緒に発売されたスーパープロドール現像液と共にこのフィルムの絶大な愛用者になった。長尺の缶を灰皿にしていた頃もあったが、いつしか写真を撮ることもない生活に。去年10年振りにはじめたモノクロ現像だが、今でも白黒フィルムは以前と同じネオパン400プレストだ。俺はこれしか使ったことが無いし。何でこんな話をするかというと、ACROSの現像で驚くべき現象が起こったからだ。ミクロファインを買うのを忘れたので、いつもどおりスーパープロドールの1:1希釈液で現像する。俺は現像液を入れる前に、水を入れる。現像液を馴染みやすくし、てなるべく現像ムラをなくすためだ。時間は決まっていない。タンクに水を入れ、振ってからすぐに入れた水を排出する。うわ!何じゃこりゃ。真っ黒に近い、物凄い濃い青紫色の水になって出て来た。液の写真を撮るひまが無かったので絵で書いたが、物凄く驚いた。過去に使ったことがある、どの白黒フィルムでもこんな液が出たことは無い。不気味だ。タンクが新品だったせいで何かの科学反応が起きたのだろうか?しかし入れたのは水だし、フィルムから染み出したとしか思えない。何だろうコレ。120フィルムなので裏紙のエキスが染み付いてるとか。悩んでいるひまは無い。なんだかよくわからないので、もう一度タンクに水を入れてすすぐ。今度は薄い青紫色だ。このぐらいなら普通なので、今度こそ現像液を注入。排出されたスーパープロドール液には着色は無い。定着まで終えたネガは正常だった。何だったんだろう。ナスの漬物の汁みたいな、凄まじい色だった。もしあれが普通なら、いきなり現像液を入れる方法だと、現像液を何度も使いまわすと墨汁みたいになるに違いない。ACROSを使っている人にはこれが常識なんだろうか?
*本件については、120フィルムのプラスチックベースに塗布されている、ハレーション防止用の染料が前浴で流れ出ているものであることが後日判明。前浴しない場合、なぜか現像液は着色されない。
マミヤRB67プロ, セコールNB127mm/F3.8, F11 1/250秒

マミヤRB67プロ, セコールNB127mm/F3.8, F11 1/60秒
ネオパン100ACROS スーパープロドール1:1希釈 20℃

フィルムスキャナが無いので、ネガの取り込みにはライトボックスとD700+マイクロニッコール 60/2.8を使用。RB67はフィルムバックのモルトが溶けており漏光が心配だったが、カブリや光線引きも無いようだ。フォーカスも問題ない。レンズもクリアーだ。フレームに太陽が入ってもゴーストが出るだけで、フレアっぽくなったりしない。

2009年1月27日火曜日

Mamiya RB67 Pro

レンズ2本をドナドナしたのを元手にバケペンかGW690を買う予定だったが、なぜかマミヤRB67を入手。ちょっと重いけどなんとかバッグに入る大きさだし、お店で安くしてもらった。ずいぶん古いので、フィルムバックのモルトが溶けていたりしてちょっと遮光が心配だ。現在テスト撮影中。

マミヤRB67プロ/セコールNB 127mm F3.8/120フィルムバック(9,000円:大森C店)
非常に使い込まれた品だが不具合は無く、レンズもクリアーでシャッターも元気。
引蓋だけなぜかPro S用。

120用のタンクが無いので秋葉原Y店で購入。ISE製の安いタンクが品切れで、どう見てもISE製なLPLの新型タンクを購入。フタが樹脂製で液漏れするタイプだ。リールもLPL製を購入。LPLのリールはモデルチェンジしない模様。カメラが安かったので予算をタンクやスキャナへ充てる事ができるが、9,000円のカメラに6,000円の現像タンクだ。銀塩まわりの環境はこの10年で激変した。

2009年1月23日金曜日

Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5+TC-200で等倍複写

フィルムを複写する実験は、これを最後にしようと思う。前回AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDでフィルムを複写し、良好な結果を得ることができた。今回は、Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5での等倍撮影時に見られる周辺部の画質低下が、テレコンで回避できるか?という実験だ。Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5とTC-200、それにPB-5、PS-5、PKリングを駆使しテストしてみた。

カメラ側からTC-200、Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5(ピントリングはPK使用時の等倍位置)、K3リング、ベローズ、K2リングPS-5の順で接続。

ベローズはワーキングディスタンスの調整に使用。レンズ先端のK3リングを完全に締めるとカメラが水平にならないので、一回転ほど緩める。カメラを支えるため、ちゃぶ台の上にCDを積み上げる。倍率調整はレンズのピントリングで、ピント調整はベローズの後ツマミで行う。

全体画像


中央部                周辺部
Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5+TC-200
絞りリングF8


中央部                周辺部
AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED(絞り開放)

Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5とTC-200の組み合わせでは、周辺ボケや樽型のディストーションは無い。しかし、等倍撮影ではテレコンとの相性が著しく悪いようで、画面全体でまんべんなくシャープネスが低下し、使いものにならないことが判明した。

2009年1月22日木曜日

AF-S Micro 60/2.8Gでフィルム複写

以前、D700+Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5+ベローズPB-5+スライドコピアPS-5で135判フィルムを複写しようとしたところ、像面湾曲が原因と思われる周辺部の画質低下のせいで使 うことができなかった。そろそろフィルムスキャナを買おうとは思っているが、AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDで、近接撮影時の像面湾曲が補正されているか確かめるために、フィルムを複写してみた。

AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDは単体で等倍までいける。本来ベローズ用のスライドコピアPS-5をレンズ先端に直結する。PS-5のレンズ側には52mm径のフィルタースレッドに取り付けるためのクリップがある。

レンズ側から、マルミDHG保護フィルター62mm、マルミ ステップダウンリング62mm-52mm、PK-4リング(10mm)、ニコン スライドコピアPS-5の順で取り付ける。倍率1:1でちょうどピントが合う。微調整はレンズ側のピントリングで可能。PS-5にネガやスリーブフィルムをはさむ場合はこれで良いが、マウントされたスライドフィルムを入れる場合は距離が近すぎるので、52mmか62mmのフィルターを1~2枚入れる必要がある。

全体画像

中央部拡大

周辺部(右上)拡大

F2.8開放でテストしたが、周辺部でもきちんと粒子が写っており、F11程度まで絞れば、画面全域で極めて良好に複写することができる。ただし、本当にきっちり等倍なのでコマを合わせるのが難しく、ライブビューでフレーミングしたが、上端にスライドコピア枠のかげりが出てしまった。もうほんの少し倍率を上げたいところだが、レンズ側に絞り環の無いGタイプレンズのため、PKリングやベローズは使用できず、また、それらが使えたとしても倍率が高すぎる。ACクローズアップレンズを使う方法も考えられるが、ピントリングの位置が変わってしまい、せっかくの近距離補正が十分働かなくなると思われ、周辺画質がどうなるか疑問だ。いずれにせよ、このレンズではフィルムの複写などの使い方は想定されていないに違いない。
ここでひとつの疑問が起こる。F時代のベローズPB-5+スライドコピアPS-5を使用する際に、本来想定されていたレンズは何だったのだろうか。マイクロではない標準レンズでは像面湾曲と樽型の歪曲がひどく、等倍での撮影は無理だ。この時代のマイクロといえば、1/2倍タイプの55mm/F3.5に違いないが、俺が使ったAiタイプとレンズ構成は変わらないはずなので、周辺画質に同様の問題があるはずである。このベローズとスライドコピアを入手した際に、L39マウント仕様に改造されたBR-2リングと共に、EL-Nikkor 80/5.6が装着されていたのを不思議に思ったが、実はこういったベローズ取付型のスライドコピアを使用するためのFマウントニッコールは存在しないのではないだろうか。Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8Sの場合、ベローズを使わないタイプのスライドコピーアダプターES-1が用意されている。おそらく、ベローズの最短がPK-13よりも厚く、等倍にするにはピントリングを無限遠方向へ多少戻さなければならず、ベローズ取付型のスライドコピアでは、近距離補正が十分働かずに周辺画質を確保できないため、このようなアクセサリーが別途用意されているのだと思われる。スライドコピーアダプターES-1はマウントされたスライド専用で、スリーブやネガフィルムをはさむことは出来ない。

ここでひとつの発見が。Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8Sの場合、「接写リングPK-13やテレコンバータTC-201を装着すれば、等倍までの近接撮影が可能」とある。まさかとは思うが、近距離補正の無い55/3.5で等倍撮影する際はPK-3やPK-13ではなく、テレコンを使うことで、像面湾曲の出るごく周辺部を捨てて画面全域で良好な画質を得ることが可能なのではないか。

2009年1月21日水曜日

AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDで散歩

AF-S Micro 60/2.8Gを持って散歩。このレンズはマイクロらしいガリガリの描写をするわけではない。ボケは滑らかになったが、シャドウ付近の階調表現は得意ではないように思う。遠景が極めてシャープなわけでもないし、ナノクリで抜けがよいかといえば、9群12枚ものレンズがある割には良いのかもしれないが、逆光以外はさほど良いとは思わない。俺は花や虫は専門ではないし、それらにはこのレンズは短すぎる。この画角で撮るとしたらポートレートのような数メートル以内の被写体だろう。SWMによるAFは極めて早い。




D700/AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED

AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDの遠景

どうも、AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDで撮影した遠景がぼんやりしている気がする。気のせいかどうかを確かめるために、以下の3本で遠景を比較してみた。

Ai AF 50mm F1.4D(SIC)
Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5
AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED

D700 ISO200 F5.6
ピクチャーコントロール:SD


Ai AF 50mm F1.4D(SIC), Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5, AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED
画像クリックでピクセル等倍画像を表示
*BloggerにJpeg画像をUploadすると低品質再圧縮されてしまい、画質が悪くなる。
違いがほとんど分からないかも知れないが元画像では確かに違いがある。


Ai AF 50mm F1.4D

Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5

AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED

僅差だが、木の葉っぱなどを見るとAF 50/1.4Dが確かにシャープだ。新旧マイクロ2本は似た傾向で、線が太い感じがする。ともに葉っぱの部分はモヤっとしている。マイクロの中間調の表現はどことなくリニアではない感じ、ていうか、影のトーンが潰れ気味でおかしい。Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5よりも、AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDはほんの少し良く見えるが、違いは微妙。Ai Micro NIKKOR 55mm F3.5は前ボケに非常に特徴がある。色味も若干青く、AFレンズとは異なる発色のようだ。Ai AF 50mm F1.4DとAF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDの前ボケはどちらもきれいだが、Ai AF 50mm F1.4Dの方が自然に思える。AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDは、一目で分かるほど他のレンズに劣るわけでは無いが、Ai AF 50mm F1.4Dに比べると、完璧とは言い難い。

一般にマクロレンズは、設計の基準撮影倍率が1/2倍程度であり遠景撮影には向かないと言われている。Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5では、本来マクロレンズが得意なはずの等倍付近(PK-3またはベローズ併用)で像面湾曲によるものと思われる四隅での像のボケが目立ち、実はフィルムの複写には使えなかったりする。Ai Micro NIKKOR 55mm F2.8Sからの近代的なマイクロニッコールでは遠景撮影も考慮されているというが、これらに採用されている近距離補正やインナーフォーカスは、遠景撮影を考慮したものというよりも、これ以前のマイクロニッコールに見られた近接撮影時の像面湾曲を解消するためであると解するのが正しいようである。実際のところ、AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDの遠景は、十分にシャープではあるが、近距離補正もEDも非球面もないAi Micro-Nikkor 55mm F3.5とほとんど変わり無い。

Ai AF 50mm F1.4D AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED
9群12枚(水色:非球面, 黄色:ED)
ナノクリスタルコート面を明示した画像をどこかで見た気がするが見つからない。
前から4枚目の非球面レンズの内側だったように思う。


AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDにて




2009年1月17日土曜日

AF-S Micro 60/2.8G試写その2

前回に引き続き、開放&逆光でいじめてみた。やはりコーティングがいいらしい。中々クリアーだ。昔のマイクロに比べれば、後ボケはずいぶん自然だ。単に収差が極めて少なくクリアーな60ミリレンズといった印象で、マイクロ独特のカリカリ感は無い。一緒に持ち出したAi マイクロ55/3.5と比較するつもりだったが、屋外でレンズ交換するのが面倒になり、実行することができなかった。


D700 AF-S Micro 60/2.8 ISO200 絞りF2.8
ピクチャーコントロール:スタンダード・シャープネス標準+2
ホワイトバランス:ディライト
ヴィネットコントロール OFF