ベルボンUTC-63三脚に付属している雲台はQHD-S6Qという自由雲台だ。この三脚の雲台はもちろん交換可能だが、規定の収納性能を発揮させるためにも付属のQHD-S6Q雲台を使わないのは惜しい。自由雲台の問題は、微妙な水平出しが難しいことだ。ふつう風景や物撮りでは上下の水平は構図によって任意のためあまり厳密ではないが、左右の傾きは見苦しくなるので無くさなければならない。自由雲台は、ボールの固定を緩めるとすべての方向がフリーになり、3ウェイ雲台のように左右の傾きだけを調整するという操作ができないので、水平出しの際には必ず同時に構図も合わせ直さなければならない。逆も同じで、この雲台はボールとは別に水平パン軸を持っているものの、上下方向についてほんの少しでも構図を変えようとすれば、同時に毎回必ず水平出しの操作が必要になる。QHD-S6Q自由雲台には、緩めた際にガクンと倒れないように、緩め幅を制限する機構は付いているが、半締めの抵抗がかかった状態でカメラを動かすとバックラッシュが生じ、細かい調整をするのには思いのほか手間と時間がかかる。また、緩めすぎると構図も大きくズレてしまい、一からやり直しとなる。
ベルボン プレシジョンレベラー
こういった自由雲台でありがちな水平出し操作の難しさを解決するために、要するに雲台の上にこれを乗っけようとしているのである。スリックの2軸微動雲台「SMH-250」も検討したが、今回はパノラマ回転台としても使えるこっちのベルボン「プレシジョンレベラー」になった。
本来はパノラマや動画撮影のために三脚と雲台の間に入れることを想定した製品だが、今回はそにに入れても意味がない。雲台の上に乗せる。
カメラを乗せるために、INPONのクランプを取り付けようとしたが、クランプのノブがプレシジョンレベラーの水準器やパノラマ回転台回りの構造に当たってしまう。パノラマ回転台の方を回してねじ込めば取り付けは可能だが、プレートを一回転させることができない。プレシジョンレベラーに付属しているゴムプレートを挟んでみたが、やっぱり少し当たる。
しまった。これは想定していなかった。あとで考えよう。
とりあえず先へ進む。
使い方1
普通に考えて使い方はこれしかない。
プレシジョンレベラー左側の「アングルストッパー」を緩め、右側の「角度調整ダイヤル」を操作してカメラの傾きをを調整する。プレシジョンレベラーを手に入れる前に疑問だったのは、右側を上げていく機構を完全に下した場合に、丁番の上下はぴったり平行になるのか、微量だけ右に傾けられるのかという点だ。実際のところ、丁番の上下が平行な状態では2ミリ程度の隙間が空く構造になっていて、角度調整ダイヤルが回らなくなるまで下すとほんの僅かに右に傾いた状態になるが、これは右へ傾けられるというよりも丁番の上下が平行になるよう微調整するためのマージンと考えられる。
(上の画像ではINPONのアルカ型クランプの代わりにマンフロットのプレートアダプター394を使っている。これを使うとプレシジョンレベラーの水準器は隠れて見えなくなるが、この使用方法ではプレシジョンレベラーの水準器あまり意味がないので問題は無い。)
使い方2
こっちは不思議な方法で、もしかするとこれが本命かもしれない。プレシジョンレベラーの角度調整ダイヤルは使わない。パノラマ回転台を使う。
三脚をほんの少しだけ前傾に設置し、自由雲台のボール固定ノブを操作して構図を合わせる。三脚を前傾に設置する必要があるのは上下にも水平な構図をとる場合だけ。上向きや下向きになる構図では、三脚を前傾に設置する必要は無い。
この状態で、プレシジョンレベラーのパノラマ回転台と、自由雲台の水平パン軸のロックを解除し、回転フリーの状態にする。
カメラが前方を向いたままになるようにつかんで固定し、もう片方の手で雲台をつかんで左右に少し回転させると、左右方向の傾きを微妙に変化させることができる。
INPONのクランプをゴムプレート無しでプレシジョンレベラーに乗せると、クランプのノブが当たってしまいパノラマ回転台は120度ほどしか回せないが、この操作を行うには十分だ。
雲台部分を左に回転させると、カメラが右に倒れる。
雲台部分を右に回転させると、カメラが左に倒れる。
これは!
スリックのフリーターン雲台の水平出し操作に似ている。水平出しの際に緩めるのはパノラマ回転台と雲台の水平パン軸の二か所。雲台ごと水平回転させる動作が左右の傾きの変化に変換されるので、グリスの効いたじんわりとした微妙な操作ができる上に、バックラッシュも生じない。手を放しても倒れる心配が無いので、カメラの重量を手で支える必要がなく、重量のある望遠レンズを装着した場合にも左右方向の微妙な傾き調整をゆっくりと安全におこなうことができる。構図が水平方向にズレることはあるが、これを戻すのはパノラマ回転台で水平方向を修正するだけなので簡単だ。カメラを斜め上や斜め下に向けた構図の場合も、同じ操作で左右の傾きを調整することができる。これ、すごい発見じゃないのか。実は。
ボールヘッドを90度倒して縦位置撮影する場合にはこの方法が使えないが、Lブラケットを使用するならこの方法のままいける。(※注)
先日開発した新型レベラーと組み合わせることで、自由雲台の水平出しが捗るに違いない。
既にお気づきだろう。これをやるにはプレシジョンレベラーである必要は無い。水平パン軸が独立している自由雲台であれば、パノラマヘッドを乗っけるだけでいい。アマゾンで調べてみたところ、独立した水平パン軸とアルカ型クランプのパノラマ回転台を最初から搭載している自由雲台は、マーキンスとSUNWAYFOTOの製品に存在している。それらの製品では追加部品無しでこの操作ができるはずである。
(注)望遠レンズにベルボンのレンズサポーターSPT-1を装着している場合は、縦位置撮影時にボールヘッドを90度倒すしかなく、この方法での傾き調整はできない。