2023年3月18日土曜日

Kenko MC SOFT 85mm F2.5

ケンコーの「MC SOFT 85mm F2.5」を入手した。これは1987年にケンコーから発売されたソフトフォーカスレンズで、このシリーズには他に「MC SOFT 45mm F4.5」「MC SOFT 35mm F4」が存在するらしい。様式としてのソフトフォーカスは、タンバールやべス単など、もっと古い時代から存在していたが、1980年代後半にもちょっとした流行があり、この頃はペンタックスやキヤノン、ミノルタなどのカメラメーカーからもソフトフォーカスレンズが発売されていた。


Kenko MC SOFT 85mm F2.5 キヤノンFDマウント(1987)

入手したものはFDマウントが付いていたが、レンズ自体はPマウントの交換式になっている。

絞りは13枚羽根。

キヤノンFDからニコンZ用のマウントアダプターを使ってZ9に装着。

このレンズにつての動画を作成した。レンズの紹介と作例のほか、後半にはオマケの小話を入れている。
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MC SOFT 85mm F2.5 作例

























Kenko MC SOFT 85mm F2.5,Nikon Z9
ピクチャーコントロール:[SD] スタンダード
アクティブD-ライティング:Auto

デジタル加工フィルターを用いても、ソフトフォーカスレンズと似た効果を得ることができることは周知である。被写体を理想的に見せるために、元画像をフォトショップでこねくり回し、主観的に多くの人為的修正を加える行為は、写真が写真でなければならない理由を蔑ろにするものだが、技術的には単純なデジタル加工フィルターの延長と言えるし、それは違うと言おうにもどこが境目なのかは曖昧だ。一般的には、ソフトフォーカスレンズやソフトフォーカスフィルターは「特殊効果」として取り扱われていて、それらが積極的全面的に実用あるいは作品作りに使われる機会はたまにであって、全体的な多数派ではない。ソフトフォーカスレンズの紡ぎ出す像は、人が肉眼で捉えられる風景と大きく違うものではある。しかし、「写真」という技術を「レンズが光学的に紡ぎ出す像を機械的(画像の輪郭生成に主観的な加工や変形を介在させないでという意味で)に二次元平面に定着させたもの」と定義するならば、ソフトフォーカスレンズで撮られた写真は紛れもなく正統な「写真」である。レンズを使わずに光と写真感材を使って作られる「フォトグラム」であるとか、「青写真」と呼ばれるジアゾ式複写の画像や、機構内に光学レンズは使われているものの、被写体が二次元表面だけに限られるコピー機の画像などを、「写真」と呼ぶことの方が余程難しいわけで、そういった意味でもソフトフォーカスレンズを使った写真の正統性には疑いの余地は無い。どことなく、奇をてらった飛び道具的な印象があるソフトフォーカスレンズであるが、注意しながら慎重に使ってみると、その描写は実に味わい深い。たった1/3段の絞りの違いで効果が大きく違ったりするのも面白い。このレンズは、折に触れもっと使っていきたいと思う。

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