2021年6月30日水曜日

Kowa Anamorphic-16

会社のお友達に古いカメラをたくさんもらった。ご実家を整理する際に出てきた品だそうで、送ってくれた段ボール箱にはカメラ本体のほかにKako製のストロボやミノルタ製の手差しのスライドプロジェクター、CマウントのTVレンズなど色々入っていた。

これは一体何だろう?Prominar銘の円筒形の革ケースを開けてみると出てきたのがこれだ。
レンズには「Kowa Amamorphic-16」と記されており、距離環とヘリコイドによるピント調節機構がある。レンズの根元は39mm径のフィルタースレッドになっている。距離環を無限遠方向に回すとレンズが伸び、最近接1.5m方向に回すとレンズが短くなる。通常のヘリコイドとは逆だ。調べてみると実はこれ、撮影用のレンズではなく、16ミリフィルムで撮影されたシネマスコープ映像を映写する際に、投影レンズに取り付けるアダプターであることがわかった。元々は投影専用だが、現代のデジカメの撮影レンズの先端にフロントコンバーターとして取り付けることでシネスコ撮影ができるようだ。

対物側から覗くと後部の開口が楕円形に見える。

後部は39mm径(約P0.75)で、ステップダウンリングを使えば撮影レンズの先端に取り付けることができる。

後端から覗くと前部の開口が横長に見える。

ヘリコイドは無限遠側で最長になり、近接で短くなる。

このタイプのフロントコンバーターを使う方法は「ダブルフォーカス」と呼ばれているようで、撮影時にはフォーカシング操作がこのレンズと撮影レンズの二か所で必要になる。

後玉の口径が小さいので、組み合わせるレンズは限られる。フルサイズでケラレが出ない画角で、ピントリングを操作しても前玉が回転しないタイプのレンズで、なおかつステップダウンリングが用意できるフィルター径のものを探す。ステップダウンリングは52-39mmのものが手に入るようなので、52mm径のMFのニッコールレンズを漁る。要件に合致したのは「New Nikkor 135mm F2.8」だ。しかし、Kowa Anamorphic-16には取り付け角度の調整機構は無く、撮影レンズ先端に取り付けた際の垂直調整はフィルタースレッドを緩めて行う必要がある。垂直調整をするために、52mm径の古いPLフィルターのガラスを抜いて回転枠を流用することも考えたが、ケラレを生じさせないためには何も挟まない方が有利だ。

*なお、この後にKowa Anamorphic-16をNikkor 135mmレンズの先端から1cmぐらい離してもケラレが生じ無いことが判明しましたので、後日の「夜景篇」からは52mm径のC-PLフィルターを挟んでいます。

このレンズを使ってZ7IIで撮影した動画がこれ。(モバイル版のページをご覧の方は画面下の「ウェブバージョンを表示」で動画へのリンクが表示できます)
SIRUIが販売しているAPS-C用のアナモルフィックレンズなどは1.33xのもので、これは16:9で撮影したフッテージを2.4:1のアスペクト比に変換することを想定した倍率になっている。しかし、Kowa Anamorphic-16はどうやらx2タイプのようだ。Z7IIではFX/DXフォーマットで動画撮影する際のアスペクト比は16:9しか選べず、このアナモルフィックレンズで撮影した動画を編集時に引き伸ばすと、アスペクト比は3.56:1になり、非常に横長な長方形になる。Adobe Premiere Pro でフッテージの変換・ピクセル縦横比「アナモルフィック 2:1」を選択して横に引き伸ばしたが、近距離で撮影した映像を見ると若干引き延ばし過ぎに思える。

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