2021年9月6日月曜日

汀線の小宇宙(2)

波に揉まれ粉々になった色とりどりのプラスチック片。切れ切れのビニール紐。タレビンに痔の薬の容器。木片や植物の茎。魚や動物の死骸が雑多な文明の破片にまみれ波打際の砂礫に打ち上げられている。一見無秩序に散乱しているように見えるそれらだが、なにかの秩序に従っているようでもある。白い貝殻は帯状に堆積していることが多く、小さな蟹の死骸を見つけたい場合はヨシなどの茎と発泡スチロールの破片が線状に固まっているものの端を探すと見つかることが多い。小枝を片手に漂着物を弄りながら450メートルの人工浜を往復する。

ISO200 F5.6

ISO200 F5.6

INDUSTAR-50はF5.6に絞っているが、中央部は非常に良く解像している。このレンズには像面湾曲は無くピント面は平坦なのだが、周辺がピンボケに見える。拡大してみると内向きのコマ収差と少しの非点収差によるもののように思える。

ISO200 F5.6

前後ボケやピント面前後には色付きが無く、軸上色収差・倍率色収差とも全く見られない。
ISO200 F3.5

ISO200 F3.5
共通データ:Nikon Z7II, INDUSTAR 50-2(50mm F3.5)
Adobe Photoshop 2021/Nikon NX Studio



2021年9月1日水曜日

Sky-Watcher AZ-GTiマウントでパノラマ撮影

Sky-Watcher AZ-GTiマウントのコントロールに使うスマホ用アプリ、SynScanProには、ユーザーオブジェクトを登録する機能があり、水平・上下方向の角度を「地上物」の項目に登録することができる。この機能を利用してパノラマ撮影をしてみよう。通常、パノラマ撮影には広角レンズを使うものだが、AZ-GTiマウントを使えば500mmの超望遠レンズを使ったパノラマ撮影も簡単に行うことができる。



Nikon Z7II , AF-S NIKKOR 200-500mm
f=500mm F8.0
縦横3x3=9枚の画像をステッチング

Nikon Z7II , NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
ISO64 F11.0
縦横3x3=9枚の画像をステッチング


Nikon Z7II , NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
ISO64 F11.0
縦横3x3=9枚の画像をステッチング

前回からの取り組みになるが、この種のネタを効果的に共有するために、今回も「ゆっくり」と呼ばれる手法を用いて動画を作成した。
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2021年8月13日金曜日

INDUSTAR 50-2でアナモルフィック

スマホ用の1.33Xアナモルフィックレンズを入手した。これ、Ulanziブランドの物がよくあるようだが、Amazonで欠品していたので同一と思われるUSKEYVISIONブランドの物を入手した。
USKEYVISION スマホ アナモルフィックレンズ iPhone用1.33X アナモルフィックレンズ
Kiowon レンズアダプターマウント ワイドスクリーンレンズ 対応 携帯電話用アナモフィックレンズ スマットフォン装着用52MMフィルターアダプターリング 1.33X (ブラック)

左のクリップはキットに付属しており、右の52mm径アダプターは別売品で、Ulanzi用らしいが、USKEYVISIONのこのレンズもまったく同じ形状のようでそのまま使うことができた。
そもそもは、スマホで動画撮影しようとしたわけではなく、前玉の小さなINDUSTAR 55-2にスマホ用のアナモルフィックレンズが装着可能なのではないかと思い、どうしても実験してみたくて入手してしまった。

INDUSTAR 55-2 のフィルター径は特殊で、絞り操作リングも兼ねているため直接装着することはできないが、天体望遠鏡用のスマホアダプターのクランプを流用してINDUSTAR 55-2レンズの前にスマホ用のアナモルフィックレンズを取り付けることができた。
INDUSTAR 55-2にUSKEYVISION 1.33Xを装着した実験の結果については、別に動画を作成してみたので下のリンクから参照していただければ幸いである。また、以前に使った16ミリ映写機用のKowa Anamorphic-16も、今回と同じ方法でINDUSTAR 55-2にマウントしてみたので、そちらの実験も同動画に含まれている。なお今回は別の実験として、動画を題材にしたこの種のネタを効果的に共有するために、「ゆっくり」と呼ばれている手法を用いて動画を作成してみた。


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2021年7月20日火曜日

Kowa Anamorphic-16 伊豆大島にて

以前、2009年に伊豆大島を訪れた際には、悪天候のため裏砂漠へ辿り着くことができなかったが、今回は月と砂漠ラインの通行制限はされておらず、裏砂漠への到達は簡単だった。

今回やりたかったことの一つ目は、先日手に入れたKowa Anamorphic-16レンズを使っての動画撮影だが、これについてはまんまと完遂することができた。
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New Nikkor 135mm F2.8の先端にKowa Anamorphic-16を取り付けた場合の水平画角は約30度で、これは75mmレンズくらいの画角になる。画角やパースは中望遠レンズのそれなのだが、「3.56:1」の非常に横長なフォーマットのせいでワイドな感じがするのは面白い。



カメラで撮影した16:9の4K動画を横2倍に引き伸ばすので、出力サイズは横8Kx縦4K(7680x2160)になる。横幅を4K解像度に合わせた場合は3840x1606で出力される。アスペクト比は16:9を横に2つ並べた状態に相当するが、この横長すぎる映像をアナモルフィックで一般的なアスペクト比「2.39:1」になるように両側をトリミングすると、横方向の情報量は撮像素子の中央部分、約2580ピクセル分を横2倍に引き伸ばしたものになり、解像感はかなり失われてしまう。

「2.39:1」バージョン

Z7IIの動画撮影は撮影できるアスペクト比が16:9に固定されているため、2倍タイプのアナモルフィックレンズから「2.39:1」の映像を作成しようとすると、元動画の両側を大きく切り落とさなければならず、高精細な出力はできない。2倍タイプのアナモルフィックレンズを使うには、アスペクト比4:3で動画撮影できるカメラが向いているが、ニコンの動画機能は貧弱なためそのような機能は無い。パナソニックにあってはLUMIX GH5あたりから既にアナモルフィックに対応した4:3での撮影機能が搭載されており、フルサイズのSシリーズにも当たり前のように搭載されている。現在、アナモルフィックレンズはスーパー35やデジタル一眼の16:9を想定した、1.33倍のタイプの物が多く使われているようだ。

今回もう一つやりたかったのは星空撮影だったが、霧が深く星を見ることはできなかった。
















 

2021年7月11日日曜日

Nikon Z7II INDUSTAR-22 50mm F3.5(1956)

これを手に入れた当時はAPS-CのEOS-Mに取り付けて使ってみたが、今回はZ7IIで使ってみよう。このレンズはL39マウントだが、L39-M42のネジ径変換リングを使ってM42-ニコンZ用のマウントアダプターにくっつけている。

Industar-22 5cm F3.5(1956)

L39・M42マウントのフランジバックはそれぞれ28.8mm・45.5mmのため、この取り付け方ではフランジバックが合っていないが、このレンズの沈胴機構を使ってピントを合わせる。







ビン底を覗いているような不思議な像だ。画面中央はピントが合っているが、周辺部へ向かい急激にボケていく。ただ、これでいて目立つ軸上色収差や倍率色収差は見られず、歪曲も無い。周辺部の像のボケは像面湾曲とは少し様子が違う。コマと非点収差が合わさったもののようだが、それでこんなになるのだろうか。

ソフトな後ボケが美しい。レンズのコントラストが低く暗部に締まりがないが、むしろギラギラせずにふんわりと写っている。



色味のせいかコントラストのせいか。カラーネガフィルムをスキャンしたような懐かし気な風合いに写る。

F8まで絞れば良像範囲は広がるが、このレンズは絞り開放時の柔らかで優し気な雰囲気が持ち味のピークだろう。絞っても意味が無い。

共通データ
INDUSTAR-22 f:3.5 F=5cm
Nikon Z7II
ピクチャーコントロール[SD]スタンダード
アクティブD-ライティング:オート
WB:5000K

2021年7月6日火曜日

Kowa Anamorphic-16映写レンズによるテスト撮影(夜景篇) Nikon Z7 II(4K)

Kowa Anamorphic-16映写レンズを使って撮影した前回の動画では、アナモルフィックレンズ特有の点光源から水平に伸びる横引きのフレアや、アウトフォーカス部分で楕円形になる玉ボケがあまりはっきりと現れていなかったので、もう少しよくわかるように夜景でテスト動画を撮り直してきた。
今回は撮影レンズ(New Nikkor 135mm F2.8)とフロントコンバーター(Kowa Anamorphic-16)の間に52mm径のC-PLフィルターを入れ、回転枠兼NDフィルターの代わりに使い、絞りはF2.8開放で撮影している。前回、ビデオ雲台(マンフロットMVH-500AH)のパン棒を輪ゴムで引っ張って水平パンをしたものの、腕が悪く見苦しかったので、今回はSky-Watcher AZ-GTiマウントを使って電動パンをさせている。DCモーターとギアによる作動音がマイクに入るため、音声は使えないという弱点があるが、手動では無理がある上下方向の微速度パンも可能である。
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スチル畑の者からすれば、レンズゴーストやフレアなどは、無いに越したことがないのだが、映画など映像の世界ではレンズ性能に対する価値観が全く異なるようで、レンズの光学的欠陥であるゴーストやフレアの類はむしろ、重要な映像効果と見なされているようだ。近年になってシネレンズを供給し始めたシグマのラインナップにも、コーティングをわざと取り除いたシリーズが用意されているなどという情報は、スチル畑の者にも気になる話だ。

映画の世界では、アナモルフィックレンズではない普通のレンズを「球面レンズ」と呼ぶらしい。写真用カメラの世界では非球面レンズという言葉には馴染はあるものの、そうでないレンズをわざわざ球面レンズとは呼ばないのでピンとはこないが、映画の世界ではアナモルフィックかそうでないかは撮影から上映まで何もかもが違うため、アナモルフィックでない普通のレンズを明示的に「球面レンズ」と呼ぶ必要がどうやらあるようだ。
アナモルフィックレンズは、シネマスコープなどワイドスクリーン映画の撮影に使われるもので、シリンドリカルレンズによって作り出される「アナモルフィックフレア」や楕円形のボケなど、レンズ描写に顕著な特徴があり、映画の雰囲気を模したシネルックと呼ばれる効果を映像に与えたい場合には、単に球面レンズで撮影した映像の上下に帯を入れるだけの方法よりも、ずっとそれっぽくなるというわけだ。現代のデジタルカメラでは、撮影した映像の上下を切って1:2.35のアスペクト比にトリミングしたとしても、十分な画質が得られるはずで、ワイドスクリーンのために水平方向を光学的に圧縮して記録することはそもそも必要無いが、映画の世界では現代でもアナモルフィックレンズが使われており、最近ではミラーレス一眼のマウントに対応した民生用のアナモルフィックレンズがSIRUIから発売されている。

今回、Kowa Anamorphic-16という奇妙なレンズを手に入れるまで、ついぞ知らなかったのだが、映写機用の古いアナモルフィックレンズを使って動画を撮影する方法は割と広く行われているようで、Youtubeではこの種の方法で撮影された映像を多く見つけることができる。また、楕円形の対物絞りにテグスを張ったものを撮影レンズに取り付けることで、アナモルフィック調のフレアやボケを得ようとするDYIの試みがあったり、クロスフィルターに似ているが十字ではなく横引きのフレアだけを発生させる「true-streak illustration」なるフィルターがシュナイダーブランドで販売されていたりと、世間にはアナモルフィック調の効果に対する需要はいくらかあるようだ。

レンズの欠陥によって引き起こされた、いかにも人工的な光学ノイズを、フィクションファンタジーの世界観を増強する効果として人類の感性が認識するようになった原因は、アナモルフィックレンズが映画にしか使われないからだろう。光学ノイズを映像効果に昇華させたという意味では、似た物に漫画やアニメで見られるレンズゴースト風の表現や、ゲーム映像などに見られる倍率色収差を模した色ズレ、周辺光量を落とした表現などが思い当たる。アニメの中でテールランプや眼光の演出などに見られるような残像表現は、撮像管時代の夜間映像の印象が起源になっているのかもしれない。縦引きのフレアはかつてCCDで撮影された映像に見られたノイズ(スミア)だが、それはファンタジー世界を舞台とした映像にはあまり登場しないようだ。CCDカメラは監視カメラやニュース映像、家庭用のビデオカメラなど、記録目的に広く使われたような印象が強く、ファンタジーとはあまり縁が無いのかもしれない。光学的なものではないが、かつての映像技術の欠陥により生まれていた電子的なノイズも、現代の映像作品に効果として用いられているのを見かけることがある。ヘリカルスキャンヘッドによる映像のつなぎ目に現れる水平ノイズを模倣したVTR調の表現や、ブラウン管を模したインターレス調の表現などがホラージャンルのゲームやビデオ作品の映像に見られたりするが、ふと気づくのは、これらがシネルックとは反対の目的に使われていることだ。映画調はファンタジー目的なのに対し、ビデオやテレビの技術を模した電子調のノイズは、フィクション作品に現実感を織り込む目的で使われている。光学ノイズと電子ノイズが人の感覚にそれぞれ反対のバイアスを掛けるのは興味深いが、そういった感覚は、我々が近代に経験してきた映像技術とそれによって作られた文化と記憶によって生じているのだろう。アナモルフィックからは話がずれてしまったが、映像効果としてのノイズについて考えさせられる機会になった。

2021年6月30日水曜日

Kowa Anamorphic-16

会社のお友達に古いカメラをたくさんもらった。ご実家を整理する際に出てきた品だそうで、送ってくれた段ボール箱にはカメラ本体のほかにKako製のストロボやミノルタ製の手差しのスライドプロジェクター、CマウントのTVレンズなど色々入っていた。

これは一体何だろう?Prominar銘の円筒形の革ケースを開けてみると出てきたのがこれだ。
レンズには「Kowa Amamorphic-16」と記されており、距離環とヘリコイドによるピント調節機構がある。レンズの根元は39mm径のフィルタースレッドになっている。距離環を無限遠方向に回すとレンズが伸び、最近接1.5m方向に回すとレンズが短くなる。通常のヘリコイドとは逆だ。調べてみると実はこれ、撮影用のレンズではなく、16ミリフィルムで撮影されたシネマスコープ映像を映写する際に、投影レンズに取り付けるアダプターであることがわかった。元々は投影専用だが、現代のデジカメの撮影レンズの先端にフロントコンバーターとして取り付けることでシネスコ撮影ができるようだ。

対物側から覗くと後部の開口が楕円形に見える。

後部は39mm径(約P0.75)で、ステップダウンリングを使えば撮影レンズの先端に取り付けることができる。

後端から覗くと前部の開口が横長に見える。

ヘリコイドは無限遠側で最長になり、近接で短くなる。

このタイプのフロントコンバーターを使う方法は「ダブルフォーカス」と呼ばれているようで、撮影時にはフォーカシング操作がこのレンズと撮影レンズの二か所で必要になる。

後玉の口径が小さいので、組み合わせるレンズは限られる。フルサイズでケラレが出ない画角で、ピントリングを操作しても前玉が回転しないタイプのレンズで、なおかつステップダウンリングが用意できるフィルター径のものを探す。ステップダウンリングは52-39mmのものが手に入るようなので、52mm径のMFのニッコールレンズを漁る。要件に合致したのは「New Nikkor 135mm F2.8」だ。しかし、Kowa Anamorphic-16には取り付け角度の調整機構は無く、撮影レンズ先端に取り付けた際の垂直調整はフィルタースレッドを緩めて行う必要がある。垂直調整をするために、52mm径の古いPLフィルターのガラスを抜いて回転枠を流用することも考えたが、ケラレを生じさせないためには何も挟まない方が有利だ。

*なお、この後にKowa Anamorphic-16をNikkor 135mmレンズの先端から1cmぐらい離してもケラレが生じ無いことが判明しましたので、後日の「夜景篇」からは52mm径のC-PLフィルターを挟んでいます。

このレンズを使ってZ7IIで撮影した動画がこれ。(モバイル版のページをご覧の方は画面下の「ウェブバージョンを表示」で動画へのリンクが表示できます)
SIRUIが販売しているAPS-C用のアナモルフィックレンズなどは1.33xのもので、これは16:9で撮影したフッテージを2.4:1のアスペクト比に変換することを想定した倍率になっている。しかし、Kowa Anamorphic-16はどうやらx2タイプのようだ。Z7IIではFX/DXフォーマットで動画撮影する際のアスペクト比は16:9しか選べず、このアナモルフィックレンズで撮影した動画を編集時に引き伸ばすと、アスペクト比は3.56:1になり、非常に横長な長方形になる。Adobe Premiere Pro でフッテージの変換・ピクセル縦横比「アナモルフィック 2:1」を選択して横に引き伸ばしたが、近距離で撮影した映像を見ると若干引き延ばし過ぎに思える。