2009年9月19日土曜日

D700で赤外写真 IR76フィルター

水準器の件でSCへ預けていたD700の修理が完了。明細を見ると「DG基盤交換」とある。どうやらソフト的に微調整できるような代物ではないらしい。もちろん、水準器は直っている。
水準器には関係ないが、出かけたついでに買ってきたグッズがこれだ。

フジフィルム製75mm角ゼラチンフィルターIR76
997円(新宿Y店)

デジカメでは普通、撮像素子に赤外カットフィルターが装備されている。赤外線にまったく感度がない機種もあるようだが、適性のある機種では長時間露光をおこなうことで赤外写真が撮影できることが知られている。昔、コダック製のハイスピードインフラレッド(HIE)というモノクロ赤外フィルムを使ってみたことがある。デジカメよりもずっと高感度で露光時間はF8で1/60程度だったと思う。しかし、保管は冷蔵庫、装てんは暗室、データシートは目安でしかなく、撮影や現像などはほとんど勘、といった具合で、取り扱いが非常に難しいフィルムだった。フィルムの値段も高価で、とても一般的とは言えるものではなかった。今ではあまり知られていないが、ND400は可視光線をカットするだけでなく、赤外線をよく通すため、取り扱いや入手の難しいゼラチンフィルターの代わりに、ND400とレッドフィルター(R60/64)を重ねて簡易赤外フィルターとして使った記憶がある。デジカメ用のIRフィルタとしては、ケンコーのPRO 1D R72が発売されているものの、実験用にはお値段的に敷居が高い。ゼラチンなら千円程度とお手軽だし、先日入手したゼラチンホルダもあることなので、一度実験してみることした。IRフィルタは波長別に数種類あるが、あまり赤外寄りの物を使うと全く写らない可能性があるので、今回は控え目にIR76を選択。

ゼラチンフィルターを装着した状態。レンズは赤外指標の付いたNikkor Auto 35mm F2.8を選択。

赤い点が赤外指標。
無限遠の場合は∞マークを赤外指標に合わせる。

最近のレンズには赤外指標が無いものがほとんどだ。EDレンズではピント補正の必要がないものもあるが、赤外指標がなくなった本当の理由は単に使う人がほとんどいないからに違いない。フィルム時代からしてこんなの使う人なんてほとんどおらず、MFレンズのほとんどに付いているのが不思議なくらいだ。フィルターを取り付けるとファインダーは真っ黒けなので、フィルター装着前にピントを合わせ、赤外指標の分だけピントを手前ヘ補正する。

Nikon D700 Nikkor Auto 35mm F2.8, アクティブDライティング:OFF
ホワイトバランス:デイライト 長秒時ノイズ低減:OFF(以上共通データ)
ISO200 F8
IRフィルターなし ピクチャーコントロール:SD  シャッタースピード: 1/400秒

IRフィルターなし ピクチャーコントロール:モノクロ  シャッタースピード: 1/400秒

IR76フィルター使用 ピクチャーコントロール:SD  シャッタースピード: 30秒

IR76フィルター使用 ピクチャーコントロール:モノクロ  シャッタースピード: 30秒

天気は薄曇り。IRフィルターを使った場合、中央からやや下、水平方向に直線状のカブリが見られる。なんだ?このカブリは。カラーで撮影したものはカブリが白色だ。そうなるとフィルターよりも手前、レンズ前面から撮像素子面までの間に漏光があるか、カメラ内部の熱線、あるいは画像処理でのノイズなどが考えられる。だが、夜景を長時間露光で撮ってもこのようなカブリは生じないし、レンズキャップをして同時間露光してみるとちゃんと真っ黒な画面だ。カメラ内部で生じたものとは考えにくい。光漏の検証のために縦位置で撮影してみる。

IR76フィルター使用 ISO800, F8, 8秒

ISO感度を上げ、露光時間を短くしてみた。やっぱり出る。縦位置では撮像素子の向きにカブリも連動する。なんだろう?フィルターホルダを回転させてもカブリの出かたは変らない。ハレ切りをするとカブリが少し減る気もするが、はっきりとした違いは分からない。ところが絞りをF8とF2.8開放で撮った次の写真。

IR76フィルター使用 ISO800, F8, 8秒

IR76フィルター使用 ISO800, F2.8, 2秒

不思議なことに、絞り開放で撮るとカブリが出ない。いや、絞りが開放だからなのか、露光時間が短いからなのかはどちらか分からない。場所を変えてみよう。

フィルター無し ピクチャーコントロール:SD, ISO800, F8, 1/2500秒

フィルター無し ピクチャーコントロール:モノクロ, ISO800, F8, 1/2500秒

IR76フィルター使用 ピクチャーコントロール:SD, ISO800, F8, 8秒

IR76フィルター使用 ピクチャーコントロール:モノクロ, ISO800, F8, 8秒


さっきの場所よりは天気が悪い。雲が厚くなりカメラも木陰で直射日光もない。この写真ではカブリはないように見える。やっぱり、光線漏れやハレーション、ゴーストの類が原因だろうか。だが、絞り開放でカブリが出なかった現象は説明が難しい。絞り羽根に反射した光線が写りこんでしまうのだろうか。今回は多くの検証ができなかったので、原因については判断を保留しなければならない。(実はこの組み合わせで持ち出す前に別のレンズ、マイクロ60/2.8Gで室内を撮ってみた際にも同じ位置にカブリが見られた。)

ところで、赤外指標って役に立っているのだろうか?フィルム時代、赤外フィルムの経験は少なく、元々ぼやけたように写るフィルムなのでピントなんてよく分からなかったように思う。デジカメなら撮り放題だし、その場で拡大し放題なので調べてみる。

フィルター無し, ピント補正なし(無限遠)

IR76フィルター使用, ピント補正なし(無限遠)

IR76フィルター使用, 赤外指標に従ってピント補正

このレンズに関しては、赤外指標に従ったピント補正は確かに効いている。しかも、指標の位置は非常に正確なようだ。昔のED望遠レンズなどは、赤外線域にまでおよぶ高度な色収差補正が施されているとして、赤外指標が無いのがウリだったりしたものだが、最近のEDレンズを使った高倍率ズームやマイクロ60/2.8Gなどは赤外線のピントは一体どうなっているのだろう*。疑問が残るが今回はこれまで。

*後日、マイクロ60/2.8Gで試したところ、色収差補正は赤外線域までは及んでおらず、通常レンズ同様、赤外線撮影では前ピン気味にしないとピンボケになる。また、AF Zoom Nikkor 80-200mm F/2.8s EDは80mm時の赤外指標が鏡筒に記されており概ねのピント補正が可能だが、200mm時はこの指標は使えない。

*カブリについてはアイピースからの逆入射光が原因と判明。アイピースシャッターを閉めることで解消した。

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