「 ニコンおもしろレンズ工房」は1995年に発売されたFマウント用の簡易レンズセットで、「ぎょぎょっと20(Fisheye Type 20mm)」「ぐぐっとマクロ(Macro 120mm f/4.5)」「どどっと400(Tele 400mm f/8)」の3本が一つの箱に収められている。「ふわっとソフト(Soft 90mm f/4.8)」は、「ググっとマクロ」の光学系から後群の凹レンズ取り除き、前群の結像レンズを前後ひっくり返して組み替えることにより実現する。「さらにぐぐっとマクロ」は「ググっとマクロ」の光学系をフォーカスチューブの前方へ移動させ、繰り出し量が大きくなるように組み立てる方法に付けられた名前だが、実質「ググっとマクロ」と同じである。「マクロ」と「ソフト」が同じ鏡筒であることや、組み替え後の状態にも変な愛称が付けられていることが本キットの構成を分かり辛いものにしているが、鏡筒の数としては「魚眼」「マクロ兼ソフトレンズ」「望遠」の3つである。
ニコンおもしろレンズ工房(1995)
8,800円(メルカリ)
「どどっと400」だけは既に一本持っているが、今回フルセットを入手することができた。すべての付属品がきちんと元箱に収められた状態で、当時物のパンフレットやステッカーも同梱されている。
元箱
おもしろレンズ工房は2000年にマイナーチェンジされたものが販売された。パッケージのデザインもこれとは異なり「Nikon おもしろレンズ工房」の文字のほかに「Fun・Fun・LensSet」とも書かれている。2000年型では各レンズの鏡筒に焦点距離と口径比および「NIKON TECHNOLOGIES INC.」が白文字でプリントされている他、どどっと400の構造が組み立て式から沈胴式に変更されているようで、前玉もクモリが生じないタイプに変更されているという。
ぎょぎょっと20(Fisheye Type 20mm f/8)
焦点距離:20mm/レンズ構成:2群3枚/口径比:F8/最短撮影距離:1m(ピント位置1.6m)固定/画角:約153度/重量:約235g
正式な魚眼レンズではなく画角は153度となっている。ドアスコープに似た前面が平らな肉厚の凹レンズが前玉に使われており、魚眼レンズ風のディストーションを楽しむことができる。良像範囲が広く、思ったよりもシャープで非常に良く写る。コーナーでは像の流れが見られるものの、倍率色収差や逆光でのゴーストも見られない。写りが良いだけに固定焦点なのが残念だが、接写リングを入れることで近接撮影もできる。
レンズとFTZの間に接写リング「K1」(約5.7mm)を入れて撮影。
左下をよく見るとわかるが、この画像だけフォトショップで人を消した。他の画像については撮影時のまま。
ぐぐっとマクロ(Macro 120mm f/4.5)
焦点距離:120mm/レンズ構成:2群3枚/口径比:F4.5/最短撮影距離:0.64m/撮影倍率:約1/3倍(さらにぐぐっとマクロ時1/1.4倍)/画角:約20度/重量:約300g
マクロというだけあって、近接時の周辺画質の良さに感心する。
構成枚数が少ないのでコントラストが高く色もきれいだ。
通常の組み立て状態で無限遠撮影ができる。ディストーションはほとんど感じられない。ものすごくシャープかといえばそうではないが、少なくとも43-86ズームよりはずっと良く写る。
周辺光量落ちが見られるが、シンプルな光学系で紡ぎ出された癖のない素直な像といった印象。
手前の枯れ草と水面が美しい。焦点距離の割には超望遠で撮ったような強い圧縮効果が感じられる。
ふわっとソフト(Soft 90mm f/8)
焦点距離:90mm/レンズ構成:1群2枚/口径比:F4.8/最短撮影距離:0.4m/撮影倍率:約1/2倍
/画角:約28度/重量:約300g
「ぐぐっとマクロ」の後群の凹レンズを取り外し、2枚玉の前群をひっくり返して鏡筒に取り付けた状態がこの「ふわっとソフト」である。ソフトレンズは、ピントの最良位置では像の芯を取り巻くボケが大きくなり、ピント合わせが難しい。EVFの拡大表示を使って像の芯をしっかり観察することができるのはEVFの利点で、ミラーレスのZではソフトレンズの難しいピントも簡単に合わせることが出来る。画像を拡大してみると、このレンズはその「像の芯」がシャープであることがわかる。
光の玉が美しい。独特のボケ。
このレンズのソフト効果が強すぎる場合は、絞りを入れることで加減ができる。開発者の方によると、F6程度がおすすめだという。
ふわっとソフト 90mm f/4.8 絞り開放
ふわっとソフト 90mm f/6.0 (対物絞り15φ)
どどっと400(Tele 400mm f/8)
焦点距離:400mm/レンズ構成:2群4枚/口径比:F8/最短撮影距離:約4.5m/画角:約6度/重量:約500g
左が以前手に入れた「どどっと400」、右が今回手に入れた物。1995年型のどどっと400は経年劣化により前玉の貼り合わせ面にクモリが生じているものが多く、今回手に入れた物も残念ながらクモリが生じていた。貼り合わせレンズを分解するのは非常に難しいため、修理はほぼ不可能だが、2000年型のどどっと400はクモリが生じないと言われている。
クモリのためコントラストが低い。
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