2021年2月15日月曜日

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sにて

ZマウントのNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの光学性能は、これまでのFマウント50mmレンズとはまったく異次元のレベルだ。ニコンは2018年にZシリーズボディと共に、こんな凄いレンズをいきなり出してきたわけだが、それはつまり1959年から続いてきたFマウントの呪縛が、光学性能の追求においていかに大きな足枷になっていたかを示している。















1980年代、一眼レフのAF化の際に大口径化させたマウントを、そのままデジタル一眼レフカメラに引き継ぐことができたキヤノンやミノルタなどに対し、マウント変更を行わずにAF化を乗り切ったニコンは、デジタル一眼レフにもそれを引き継いだ。センサーサイズがAPS-Cだった初期のニコン機では、マウント径やフランジバックについて取り沙汰されることはあまりなかったが、センサーのフルサイズ化と高画素化に伴い、Fマウントの交換レンズの光学性能はだんだん苦しくなっていくのだった。ボディがD800世代になると画素数は3600万画素に達し、ニコンは推奨レンズリストなるものを公開したものの、実際には画面周辺部まできちんと解像することのできるFマウントレンズはほとんど存在せず、高画素の恩恵を画面の隅々にまで享受できるのは一部の望遠系単焦点レンズやマイクロニッコールなど限られたものだけになった。Fマウントの終焉を決定付けたのは、高画素化に対応したとして2015年に更新された大三元ズームのひとつ「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」に他ならないだろう。このレンズは前モデルのGタイプから8年後、その間に開発されたED非球面レンズや高屈折率レンズなどの高度なテクノロジーをすべて投入し、満を持した形で鳴り物入りで登場したが、その無残な光学性能と杜撰な品質管理*はニッコールの看板に泥を塗る結果になった。この失敗は、強力なコンピュータを使って高度に設計された最新レンズが適切な品質保証が行われないとどのような結果になるかを内外へ知らしめ、2015年当時、Zマウントシステムはまだ開発の初期段階にあったであろうが、マウントの大口径化とフランジバックの短縮化という要件に加え、生産現場におけるこれまでとは桁違いの品質管理の必要性が課題に上がっただろう。これに合わせ、今日に見られる海外への生産拠点の移行と技術の集中・国内工場の一部閉鎖など、デジタルカメラ市場の縮小とニーズの変化へ向けた大改革へと動き出したのも同じ頃だったのではなかろうか。ここ数年のニコンの奮闘の成果が着実に実を結んでいることは、今日のZレンズの光学性能を見るや手に取るようにはっきりと分かる。これらのZレンズや第二世代のZボディはタイランド拠点で生産されている。(なお、中国製のZレンズもあるらしい)

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