いまだに信じられない。F3を5250円で入手した。ありえない値段だ。
つい先日だ。近所のHard OFFのジャンク箱をいつものようにあさっていた。
箱いっぱいのコンパクトカメラやらケーブルやらに埋もれて、あずき色のニコンのハードケースが見えた。5250円の値札が貼ってある。ん??手にとってみるとずっしり重い。あれ。中身入ってるじゃん。なんだろ…パカっと開けると、丸い接眼レンズにアイピースシャッターのレバーが…。げげ! F3じゃないか!HPだ。黒だ。レンズもついてる。水没品か…いや、やけにきれいだな。おかしいな…。ケースと別か?いや値札はケースにしかついてない。もしや!当たりか!しかし、あり得ない値段だ。やっぱり水没品?
ハードケースの上のやつがボロボロになって粉がいっぱい出てくる。しかしアイピースにもレンズにも水没品らしき染みは無い。一見粉まみれで汚いがよく見るときれいだ。ファインダーを覗いても問題ない。バッテリー切れらしいが、緊急作動レバーを押すとシャッターが切れる。快調だ。幕もきれいだ。アレ?データバックがついてる。こいつはすごい。ケースから取り出してみるとアタリやへこみも見当たらない。傷もハガレもテカリもない…て言うか、塗装を見る限り新品同様じゃないか。鏡筒にもPassedのシール貼ったままだし。ミラーは?ちょっと汚れてるが問題ない。モルトのカスが少々。レンズにはカビやホコリも無く、フィルター表面にも指紋すら無い。一体どうなってるんだ?仮に不動品でも2万円以上にはなりそうだ。よし。勝負だ。ていうか既に勝った気分。電池を入れれば動くに違いない。いや、動いて欲しいな…。
半信半疑でレジへ差し出すと、お店の方は「ジャンクですから」と言いつつケースの中身も確認せずに5250円で気前良く売ってくれた。動作品なら52,500円だっておかしくない品だ。この店の普段の様子を知っているだけに、ジャンク5万円もあり得る。なんかの間違いかも知れない。早く立ち去らねば!
「そのまんまでいいです」と言い、粉まみれのケースごとF3をわしづかみにして、後ろを振り返りながらいそいそと帰宅。
Hard OFFのお買い上げシールと5250円の値札が貼られたF3が机の上に。
上カバーは捨てるしかないな。分解してチェックする。データバック、ファインダー、スクリーン、レンズ…。さっき興奮して店ではレンズはよく見なかった。てっきり35-70/3.5だと思っていたが、こいつは…すげぇ。なんとAi-s 25-50mm F4だ。
しかし、古いF3は液晶やら電子部品がやばいらしい。結局そういうことかもしれない。きれいにクリーニングした後、電池を入れてみる。電源スイッチを入れる。液晶は…。
おお!生きてる。
あれこれいじりまわすが何の問題も見つからない。オートも明るさに反応している。シャッターは全速切れるし、スローシャッターも快調。セルフタイマーも動く。ファインダー照明も点灯する。これは完動品としか言いようがない。撮ってみないとわからないが、無限遠も出ているみたいだし、この分じゃおそらく問題ないだろう。データバック MF-14も電池を入れてみたところ、問題なく日付や時刻を設定できる。
何てこった。あの店は不燃物しか置いてないと思っていた。ここ数年で最初で最後の快挙だ。やるじゃないか、Book Off。いや違った、Hard Off。近々閉店だそうだ。ありがとう。
しかし、本当に傷ひとつ無い。エプロン部の底にほんの2ミリ程度の塗装の浮きがある程度だ。このハードケース(正確にはF3用セミソフトケースCF-23D+CF-21A)は、経年変化で上身の縁取り部分の合皮が劣化し、粉を撒き散らして凄まじ い状態だったが、実はこのずたぼろのケースが、製造から25年*もの間、本体を傷ひとつ無い状態で守り続け、何かの間違いでジャンク送りになった後も、ジャ ンク箱のゴロゴロ地獄からこのF3を守り続けていた。そしてこいつは、あの日俺がやってくるのを待ち続けていたに違いない。数奇な運命の末、四半世紀の時を越えて俺の手元にやっ てきた不思議なF3。供養してやらねば。
※裏蓋ヒンジ部分のスタンプと156万番台というシリアルから1982年12月製と思われる。Bの着色やグリップ素材は後期の物と同じ仕様である。
1 件のコメント:
はじめまして、nikon f3 ジャンクの検索でやってきました。
HARD OFFで5250円、ジャンクでもこの値段は出てこないっすね。
掘り出し物とはまさにこれです。
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