2020年7月23日木曜日

D850で赤外写真 赤外フィルター SC72/SC74/IR76 比較

SC72とIR76は以前から使っている。SC72は可視光域の色味を残すことができ、ホワイトバランスを補正すると天然色に近い配色でカラー化が出来る。IR76はホワイトバランスを補正すると、モノクロに近いセピアと青のツートーンの画像になる。センサーが裏面照射式に変わったことが関係しているかもしれないが、D850でSC72フィルターを使うと色の出方がニコンの以前の機種とは少し違う。具体的には、WB補正後の青空が以前よりもどぎつい紫色になってしまう。そこで、SC72とIR74の中間のSC74を使ったらどうなるのか気になったので、SC74を手に入れて3種類のフィルターの効果を比較してみた。


撮影方法はこれまでと同じで、D850に赤外指標のある古いレンズ「Nikkor-UD Auto 20mm F3.5」を使う。ホワイトバランス=5000KでRAW撮影し、現像時にCapture NX-Dで、スポイトツールを使ってホワイトバランスを補正する。


ホワイトバランスは画像内のグレーの個所をポイントして設定。この画像では木の杭あたりをポイントしている。晴天では空はどぎつい青紫色になるが、この日は曇天のため空の青味が薄く、SC72では薄い紫色になっている。赤外線をよく反射する葉は明るい緑でぼんやり光ったように写り、赤や赤紫の花は黄色に偏移している。


IR76とSC74は色味がほとんど無く、白黒に近い画像になるが、IR76の方がやはり赤外効果が強い。色味の違いを見るために、IR76はSC74と同じホワイトバランスで現像した。IR76は青味とセピア色のツートーンの分離がはっきりしていて面白い。








赤外指標を使ったピント補正は、SC72では行っていない。SC74とIR76ではレンズの赤外指標に従いピント補正を行っている。このレンズの場合、無限遠を撮影するにはヘリコイドを少し繰り出して距離環を3mあたりにする、といった具合だ。
可視光撮影に対する露出倍数はだいたい画像のExif通りだが、現像時にも+-1段程度の明るさ補正を行っている。SC74とIR76は、撮影時には同じ露出でいいようだ。





今回せっかく入手したSC74だが、全然面白くないことがわかった。SC72の空の紫色を少し抑えた感じを期待していたが、色味がほとんどなくIR76に近い。更に、IR76の方がツートーンがはっきりしていて画像が面白く、SC74はどっち付かずで面白みがない。ただ、最後の画像ではIR76の画像はセンタースポットのように色味が分かれており、SC74の方が良い結果に見える。(これはレンズの赤外特性不適合により起こるセンタースポットの問題とは別で、そっちの場合はもっとずっとひどい画像になる)
赤外撮影用フィルターの効果の出方はカメラの機種により異なる結果になるはずだが、D850の場合は、以前から使っているSC72とIR76がベストのようだ。

SC72フィルターを使ったカラー画像は肉眼での天然色に似た配色の赤外カラー画像になる。赤外画像のカラー化で一般的な、カラーチャンネルを入れ替えた可視光線画像と合成する方法「False color」に対して、ホワイトバランスを補正するだけでできるこの画像は、個人的には「True color」あるいは「Natural color」と呼んでいて、この配色を気に入っているが、なぜか巷では似たような画像はあまり見かけない。SC72フィルターではカメラのホワイトバランス採取が機能しないことや、SC72フィルターの画像をLightroomやPhotoshopでホワイトバランスを補正することが出来ないのが理由かもしれないが、ニコン機の場合はCapture-NXDで、キヤノン機の場合はDPP4(Digital Photo professional 4)を使えばSC72の画像は良好にホワイトバランスを補正することができる。海外のユーザーサイトなどを見ると、720nm界隈はHOYAのR72フィルターがメジャーなようで、特性の違いから富士フィルムのSC72のような色味が出ないのだろうか。そう思って少し調べてみるとHOYA R72や他のIRフィルターに関する興味深いレポートを見つけた。
Infrared Filter Comparisons: Hoya, BCI, Neewer, Zomeimparisons-hoya-bci-neewer-zomei
どうやら、HOYA R72フィルターの場合、SC74やIR76と同じようなセピアとブルーのツートーンになるようだ。