2018年4月18日水曜日

AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED

「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」は2008年に発売されたレンズで、2009年の初めに手に入れてから10年近く使っている。4年目に一度SWMが故障して交換したが、9年目の今年、2度目のSWM交換になった。このレンズ、実は去年から故障していたが、そろそろ新型へリニューアルしそうなので修理に出すのを控えていた。どうも新型が出る気配もなさそうなので、先日修理に出すことにした。SWMには寿命があると言われており、確かにこのレンズは手持ちのAF-Sタイプのレンズ中では一番古い品物だが、モーターが壊れる故障は-しかも2回も-このAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED以外では一度も経験が無く、このレンズだけが特別壊れやすいように思う。
5年前の1度目のSWM交換時は修理後に盛大な片ボケ状態で戻ってきたので再修理をお願いして元に戻ったが、2度目の今回もSWM交換後に左端の解像が悪くなっていた。

今回のSWM交換修理後
これが片ボケが疑われる画像だが、石垣の右側はOKだが左端はボケているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO100 F8.0
45MP 元サイズ画像

これもまたかなり微妙なところだが、左右にある投光器や、下の水面の石垣を見ると左の方がぼやけているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F8.0
正直、これはかなり微妙なレベルで、経験上はこの程度だとおそらく正常範囲内だといって戻ってくる。そして予想通り正常範囲内ということで戻ってきたが、ここまでは想定内だ。実はこういう場合でも、黙って直してくれていることがある。新聞紙と鏡を使ってチェックしてみると近距離では完璧で、F2.8解放で隅々までよく解像しており片ボケも無い。

以下再修理後
先日開業した東京ミッドタウン日比谷にて。絞りF2.8解放でよく解像している。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO100 F2.8
日比谷公園にて。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO200 F2.8
45MP 元サイズ画像

片ボケと周辺の解像をチェックするために平面を相手にマイクロ60を執拗にいじめ倒す。F5.6だが水平方向については端までよく解像している。片ボケは無いように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO200 F5.6
45MP 元サイズ画像

これはシャッターボタンを右下にして縦位置を撮影している。左は問題ない。右が怪しい気がするが気のせいか。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F5.6
45MP 元サイズ画像


完全逆光ながら、ビル上の文字の看板がフレアもパーフリも出ず、非常に良く写っている。この構図では上下はわからないが、少なくとも左右のピント差は無く両端ともよく解像している。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F5.6
45MP 元サイズ画像

F2.8解放にて。これは可も不可も無い。ピントは合っており、AF微調整は+-0でとくに問題ない。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F2.8
45MP 元サイズ画像

この辺の石垣は撮影距離が手頃で片ボケのチェックにちょうどいい。細部は中央に比べ左右端のコントラストはやや低くなり解像感は落ちるがこのレンズでは許容範囲だろう。コーナーの木々の葉も良く解像している。やや遠距離だが、水面あたりの石垣で左右を比べてみるとピントに差は無いように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO640 F8.0
45MP 元サイズ画像


画像下端、堀沿いを歩く人々や車、街路樹のあたりは像の滲みがある。これで精一杯なのか。これでいいのか。こんなもんか。ここらへんになると、ピント位置のコントロール次第で解像も変わってくる。これは位相差AFなのでLVのコントラストAFだと違いがあるかもしれない。まあ、このレンズは元々こんな写りをするときもある。天気も悪いしISO感度も高め、三脚も使っていない。再修理で調整し直してくれたのか本当に何もしていなのか正直わからないが、どうも直っているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F8.0
45MP 元サイズ画像
共通データ:ピクチャーコントロール[SD]スタンダード:輪郭強調無し
Capture NX-D アンシャープマスク:半径=3, 適用量=80
ホワイトバランス=自然光オート
自動歪み補正=あり
ヴィネットコントロール=50

有楽町のガード下。この画像のみ現像時にトーンを細工した。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO800 F5.6
45MP 元サイズ画像
ピクチャーコントロール[LS]風景
ガンマ=0.71
露出補正:+1/3

2018年4月16日月曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)

今回は、前回の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)」の続き。
「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」は2015年10月に発売されたレンズだ。昨年D850が発売されてから急に品不足となり、最近まで手に入りにくい状況が続いていた。このレンズの発表当時は、先代の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」にVRがくっついてサイズが大きくなっただけのものだと思っていたのだが、実は全然そうではないらしい。
左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)

最近になって先代のGタイプと今回のEタイプを設計したニコンの原田壮基氏と藤原誠氏が「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」についてお話されているインタビュー記事を読む機会があった。画質上の改善点について尋ねられた部分で原田氏は「ズーム全域での像面湾曲の減少と周辺画質向上」「広角から望遠までコマ収差の低減」「中間画角でもより高画素にマッチした、よりフラットな像面」だと語っている。

デジカメWatch「インタビューAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」
PHOTO YODOBASHI「BEST WISHES FOR ANOTHER 100 YEARS - レンズ設計者インタビュー」

発売から2年以上経っているものの、この二つの記事は見たことがなかった。そもそもこの新しいレンズは自分には高価すぎて完全にノーマークだったのだ。周辺画質の件はコマ収差について多く触れられているが、あの像面湾曲も直したと仰っているということで間違いないのか。にわかには信じられず、インタビュー記事を何度も何度も読み返した。
そして、海外のテスト記事を漁ってみたところ、ユーザーの側からも開発者が明かした改善内容を裏付ける結果が観測されていることが分かった。

Lensrentals.com "Nikon 24-70mm f/2.8 ED AF-S VR Sharpness & Optical Bench Testing"より
「ニコンは新しいレンズでデザインの選択をしました。デザインの選択は「ベンチテスターにとって素晴らしいものにしましょう」というものではありませんでした。彼らは、イメージフィールド全体で良好な解像度に交換するために、絶対的な最良の中心解像度をあきらめました。したがって、画像の1/3の中心では、古いレンズはMTFの結果が良いが、残りの部分では新しいレンズがはるかに優れている。」
「左右に非常に等しい鮮明さと、ズーム範囲全体で同等の鮮明さを持つフラットフィールドを持つ」
(Lensrentals.com:Roger Cicala)

Potography Life "Nikon 24-70mm f/2.8E VR Review"より
「新しいNikon 24-70mm f / 2.8E VRは、その前身と直接比較すると、わずかに悪い中心性能を示しますが、ミッドフレームとコーナー性能ははるかに優れています。その鮮明度は比較のためにはるかに均等に広がっており、風景や建築を撮影するのにもっと良いレンズになっています。これは、無限遠で被写体を撮影する場合に特に顕著です。」
「私がニコンに代わって言うならば、それは莫大な成果だ!実際、Nikon 24-70mm f / 2.8E VRは他の多くの単焦点レンズよりもコーナーは優れている。」
(Photography Life:Nasim Mansurov)

kenrockwell.com "Nikon 24-70mm VR"より
「この24-70は解放のf/2.8でも3600万画素の端々まで最高にシャープです。」
「2007年に導入された古い24-70mm f/2.8G(2007-2015)は、当時最先端だった1200万画素のカメラで撮影するには素晴らしかったが、今日の現代的なカメラでは、この新しいE VRレンズが明らかに優れています」
「これまでにニコンと他のものによって作られたミッドレンジズームでは最もシャープです。」
「ニコンのデザイナーは、ズームレンズの歪曲を抑えることをしないという引き換えに、コーナーでよりシャープネスを得ています。」
(Ken Rockwell)

その他のレビュー記事でも、先代Gタイプよりも周辺画質が向上していることが確認されている。
STEPHAN RUSSENSCHUCK "Hands on review: AF-S Nikkor 24-70 mm f/2.8E ED VR"
CAMERALABS "Nikon 24-70mm f2.8E VR review - Quality"
OpticaLimits "Nikkor AF-S 24-70mm f/2.8E ED VR (FX) - Review / Test Report - Sample Images & Verdict"
Nikon rumors "Nikon AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8E ED VR lens review"

大変だ。この間、D810をスキップしたのと、旧型Gについてはそれはそれで気に入って使っていたので、うっかり2年間以上も気づかなかった。これらが全て本当ならば、自分が望んだとおりの改良方向ど真ん中だ。8年前にGを手に入れた時に、「像面湾曲が酷い」と言ってここで散々こき下ろした自分の立場としては、何が何でもこの新型を手に入れなければならない。

また長くなったので続きは次回AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その3)にて。




2018年4月15日日曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)

先代の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」をD700の頃から使っている。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは、ニッコールのラインナップ上ではプロクラスの標準ズームという位置付けだが、何にでも使える万能ズームというわけではない。いわゆる「でっこまひっこま」的な不思議な性質を持つレンズだ。コントラストが高く力強い描写をし、ポートレートやスナップでは、暗部が引き締まった吸い込まれるような背景ボケに、ピント面の被写体が浮き出しているような立体感を紡ぎだす。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDにて (c)俺2010

このレンズは近~中距離の被写体を絞り開放付近で撮影する場合に非常に美しい写りをするが、一方でズームのワイド側は像面湾曲が顕著で、画面中央部から周辺へ向かうにつれピント面が急激に前ピンになる。このせいで、平面的に配置されている被写体に正対して向かう場合や無限遠を相手にする場合には、画面周辺は露骨にピンボケになってしまう。このレンズのワイド側を使う場合、画面全体にピントを合わせることはあきらめ、絞りの解放付近を使ったボケを生かした作図をするか、さもなくば、足元や左右に近景を配した一点透視図法のような構図を工夫することになる。しかしながら、このレンズのフィールドカーブは現実にとり得ることができる構図とはかけ離れており、多くの場合には不都合にしか作用せず、風景などでは周辺の前ピンを被写界深度で誤魔化すために、うんと絞り込んで使うしかない。ところが、一般的なレンズでは解放から3段も絞れば周辺まで画質が安定するのが普通なのに対し、このレンズの場合、画面中央部にピントを合わせると1200万画素のD700でさえ、F8にまで絞り込んでも画面周辺部を被写界深度内に入れることが難しかった。(参考:2010年の記事
当時の1200万画素のボディでは、F8まで絞り込んだ上にフォーカスを僅かに後ピン方向へコントロールするか、回折の影響をなんとか許容できるF11まで絞り込むことで、画面中央部と周辺部の画質差があまり目立たないようにすることはできたが、このレンズは2007年当時の1200万画素のボディを想定し、ギリギリの収差バランスで設計されたのだろう。
高画素化された以降のボディでも、このレンズは被写体がピント面にある限りは解像力やコントラストは抜群なので、構図次第では充分使うことができる。だが、高画素機では遠景や平面を相手にする機会も一段と多くなり、このレンズの極端な性格はそういった被写体にはまったく適していないことがはっきりと表れるようになった。もちろん、単焦点レンズであってもこのあたりの焦点域では、フルサイズ画面の端から端までキッチリ解像するレンズを見つけるのは難しいし、ズームレンズにそれを求めるのは常識ではない。日常のすべての被写体が平面や無限遠であるというわけではないし、そんな構図ばかりが良い写真であるはずもない。だが、個人的には高画素機のD800EやD850を手に入れてからは、レンズが結ぶ細密な像を画面全体の隅々にまで充満させるという遊びにのめり込んでしまい、近頃にあっては単焦点レンズや望遠系のレンズなどを使うことが多く、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの出番はほとんど無くなっていた。
左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)

長くなったので、続きは次回AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)にて。