2020年9月16日水曜日

ラプトル60 架台の交換 その2

前回、ラプトル60をマンフロット410雲台を使ってカメラ用三脚に取り付けてみたが、410雲台は水平微動に小さなバックラッシュがあり、反対方向へ動かし出す際、僅かに上下方向にも動いてしまう。高倍率では視野が円を描くように動いてしまい、導入した天体が視野から外れてしまう。また、410雲台は長いものを乗せると振動のおさまりも悪く、望遠鏡のフォーカシングノブを触ると像がピョンピョン飛び跳ねてしまいピント合わせも難しい。そういうわけで、後ろを別の三脚で支える形態を作ってみる。

前をジッツオ5型三脚、後を4型三脚で支える。410雲台は微動も剛性も駄目なので、雲台をビデオ用のマンフロットのMVH500AHに交換する。重量バランスはやや後方寄りになり、後段の三脚がカメラ側の重量を支えている形になるが、ビデオ雲台のチルトを少し締めればフリーストップの状態にすることもできる。画像ではちょっと見え辛いが、フォーカシングノブの下あたりを支えるようにスピゴットを一個入れ、望遠鏡を三点で支持するようにして振動を抑えるようにした。

スリックプレートの後端にベルボンSPT-1レンズサポーターを連結する。ドローチューブの動きに合わせてカメラが前後に動くように、カメラの下に手動式のビデオスライダーを取り付ける。後段の4型三脚は、横向きに付けたマクロスライダーと三脚のエレベーターが微動装置の役割をする。マクロスライダーの上にはスピゴットの先からカメラネジが飛び出た状態のものが取り付けられていて、SPT-1の底部に接触している。ここは乗っかっているだけだが、カメラネジの先端がSPT-1底部の縦溝にちょうど引っ掛かる形になり、マクロスライダーで左右に動かすことができる。望遠鏡を向ける方位や仰角が微動装置の可動範囲を超える場合は三脚ごと動かしてやる必要はあるが、微動装置としては抜群の操作感で、高倍率でも容易に視野をコントロールできる。

前回、ファインダーはベネッセの望遠鏡だったが、これもアップグレードする。ケンコーのMILTOL(ミルトル)スコープアイピース(Fマウント用)のアイピースを外し、内側に十字線を仕込む。

こんな風に見える。

ミルトルスコープアイピースには、正立プリズムと2.4倍のバローレンズのような光学系が内蔵されている。付属のアイピースは22mmで、カメラマウント側にAi Zoom-Nikkor 80-200mm F4sを付ければ、倍率8.7~21.8倍のスコープになる。ミルトルスコープの下には雲台代わりにベルボンのプレシジョンレベラーを入れる。

カメラアダプターの中に6mmアイピースを仕込み、昼間に遠くの景色を覗いてみたところ、カメラのフォーカシングスクリーンは、ピンホールレンズのように暗い。合成焦点距離は11600mmくらいになるようで、F値はどう計算するのかわからないが、口径60mmで割るとしたらF193になる。昼間の景色でもシャッタースピードを1/60秒にするにはISO感度が25600になる。これで木星や土星を撮影することが果たしてできるのだろうか。スマホを使ったコリメート撮影の方が良い結果になる気がする。天気の悪い日が続いていて中々実験できない。

2020年9月2日水曜日

ラプトル60 ファーストライト

スコープテック社の「ラプトル60」を入手した。天体望遠鏡は専門外だが、コロナ渦下の在宅期間中、これを作っている大沼崇氏が登場する番組の動画をYoutubeで見ているうちに欲しくなった。天体望遠鏡本体の他に、別途Amazonでスマホ用の撮影アダプターとTマウントの直焦点・拡大撮影用アダプターも入手した。買ったばかりの新しい望遠鏡を初めて覗くことを、天体望遠鏡マニアの世界では「ファーストライト」と呼ぶらしい。早速覗いてみよう。

スコープテック ラプトル60天体望遠鏡
スコープタウンHP

スマホでコリメート撮影

ラプトル60 K.20mm(35倍), iPhone 6sでコリメート撮影
月齢 10

眼視で導入した後ピント合わせをしてからスマホを取り付けるのだが、光軸とアイピースからの距離を調整するのがちょっと面倒臭い。眼視ではもうすこし良く見える。

ラプトル60 F.8mm(87.5倍), iPhone 6sでコリメート撮影

付属の8mmアイピースでは瞳径がだいぶ小さくなり、スマホの調整も難しくなる。色収差が目立ち、画像もちょっとぼやけている。

土星
ラプトル60 F.8mm(87.5倍), iPhone 6sでコリメート撮影

木星
ラプトル60 F.8mm(87.5倍), iPhone 6sでコリメート撮影

注)上の画像では木星が土星よりだいぶ大きくなっているが、これはスマホ側でズーム操作をしているため。

iPhoneの標準カメラアプリの使い方を知らなかった。AFの切り方が分からず難儀したがなんとか撮影。月ではAFが使えたが、惑星は点像なのでAFが止まらなくなる。画面をタップすると露出補正マークが出るのは分かったが、数秒で解除されてしまい、AFが始まってしまう。後から調べてみると、1秒間ぐらい長押しタップするのが正解で、これでAE+AFロックの状態になり、フォーカスは固定されて露出補正は可能な状態になる。今度やってみよう。Lightroomアプリのカメラも使ってみたが、MF時に出る緑のフォーカスピーキング表示を切ることができず、これが邪魔で全然使えなかった。

直焦点

月齢11
ラプトル60 f=700mm 直焦点 F11相当 Nikon D850 (DXクロップ)
ISO=800 1/640秒

一眼レフ用のアダプターを使って直焦点でD850を接続する。ラプトル60に直焦点でカメラを接続すると、フルサイズではケラレが出るが、イメージサークルはAPS-Cサイズには十分なのでDXクロップで撮影する。直焦点での月画像は非常にシャープで色収差は見られない。2枚玉のアクロマートレンズでこんなに良く写る。
 カメラレンズの場合、望遠レンズになるほど色収差の影響は大きく、EDレンズを使った大口径単焦点望遠レンズであってもそのレンズの最高の解像力が得られるのは絞りは開放ではなくて諸収差が最小になる1~2段絞ったあたりである、という認識が一般的ではないだろうか。一方、天体望遠鏡の場合、屈折式の望遠鏡は焦点距離が長いもの程、より色収差を少なくすることができ、口径は大きいほど分解能が高く星像はシャープに見える、という話になる。両業界の認識に光学的な矛盾はおそらくは無いのであろうが、口径や諸収差にまつわる事情は異なっているように思える。

木星
ラプトル60 f=700mm 直焦点 Nikon D850 (DXクロップ)
ISO=800 1/250秒

上の画像を拡大したもの
木星は等倍画像で直径方向に35ピクセル

土星
ラプトル60 f=700mm 直焦点 Nikon D850 (DXクロップ)
ISO=800 1/30秒

上の画像を拡大したもの
土星は等倍画像で直径方向に30ピクセル

写真用のカメラレンズと天体望遠鏡では何が異なるのか。直焦点で撮影した惑星の画像のサイズを見ると、その答えのヒントがある。700mm直焦点での惑星の像は、4600万画素のフルサイズセンサー上では僅か30ピクセル程の幅しかない。バストアップのポートレート写真という構図なら、これは瞳に写るキャッチライト程のサイズに過ぎない。カメラ用の望遠レンズなら、これだけ解像していればセンサーの画素ピッチからしても十分といえる。しかし惑星観察では、この小さな点像が出発点なのである。惑星観察ではこれを更に接眼レンズを使って大幅に拡大し、その中に縞模様やら大赤斑やらカッシーニの溝などを見つけようとしているのだから、天体望遠鏡の対物レンズにはそれはもう、果てしない解像力が求められるだろう。

直焦点撮影時の像の大きさ:月画像に同じ方法で撮影した木星・土星画像を合成
ラプトル60 f=700mm 直焦点 Nikon D850 (DXクロップ)

ラプトル60 f=700mm 直焦点 Nikon D850 (DXクロップ)
Lynkeosというソフトを使って8枚の画像をスタック合成し、
更にPhotoshopで解像度を4倍に水増し

ラプトル60 架台の交換

カメラアダプターにアイピースを入れ込む拡大撮影も試してみたが、導入やフォーカシングが困難でまともに写すことができなかった。架台の改良が必要だ。ラプトル60のドローチューブは頑丈そうでガタも無いが、1kgもあるカメラボディをぶら下げることは想定されていないに違いなく、フルサイズのD850を付けるとフォーカシングノブの操作も重くなり、光軸的にもさすがにやばい感じがする。重量の軽いAPS-C機はD3500とEOS-Mを持っているが、リモートコードや電子シャッターを使った無振動撮影をするにはD850を使うより他ない。
スコープタウンで販売されているTマウントアダプターはドローチューブにねじ込む形式で、カメラが脱落する心配の無いものだが、今回Amazonで入手したカメラアダプターはは31.7mm径のアイピースと同じように差し込むタイプのため、カメラの脱落が心配だ。

Vixen式のアリガタなど、天体望遠鏡で使われる部品は持っていないので、写真用の器具を寄せ集めて架台を組み立てる。上に乗っかっている妙な望遠鏡が目を引くが、これはベネッセの付録「月はかせ望遠鏡ムーンナビゲーター」(口径30mm 30倍)という代物で、要するにファインダーである。ラプトルの穴式ファインダーはカメラを取り付けると覗けなくなってしまうのだ。このファインダーは調整は簡単だが、がっちり固定できないのでなんとかする必要がある。

ラプトル60の鏡筒から出ている2本のM5ボルト(約8センチ幅)をチーズプレートに通し、元のナットで締める。ナットが下に飛び出してしまうので、クイックシューとクランプを挟んでスリックプレートに乗せる。それをマンフロット410ギア雲台に乗せる。

カメラの下にあるのは手動式の中華製ビデオスライダー。カメラの重量を下から支え、ドローチューブの出し入れに連動してカメラを前後にスライドさせることができる。高さの調節はベルボンSPT-1のパイプ部分で行う。

この三脚は、ジャイアントと呼ばれるジッツオのアルミ5型5段仕様のもので、7kg以上の重さががある。写真用では最大クラスの三脚だが、あちらの業界では写真用の三脚なんて屁のようなもんかもしれない。本格的な天体望遠鏡は赤道儀だけでも10kgを超え、鏡筒やカウンターウェイトなどを含めた機材の総重量は写真用機材とは桁違いだ。だが、この架台では剛性のボトルネックは三脚ではなくおそらく410雲台だろう。重心バランスもカメラ側に偏っているが、これ以上手前でマウントすることができない。このところ天気が悪く、週末は台風が接近しそうなので、次回の天体観測は来週になるかも。