2010年3月8日月曜日

モノクロ写真

モノクロ写真はカラー写真とは何が違うのか?といった話になると、「モノクロ写真は存在感を強調することができる」などと言われる場合が多い。そしてその撮影方法となると、「カラー写真とは被写体や撮影方法が異なり、物の形状の面白さやコントラスト、質感などに重点を置く」だとか、「色が無く階調だけで表現するため光の捉え方が重要」などと説明される場合もある。どれも断片的には正しい気がするが、モノクロ写真の本当の意味や特性を言い当てていないように思う。色が無いことがなぜ存在感を強調するのか。

 
下の画像からグレイスケールに変換


 
Olympus PEN-EE D.Zuiko 2.8cm F3.5 
DNP CENTURIA 200
モノクロ写真の本当の特性とは、環境光の色温度が持ち込まれないことだ。カラー写真では天候や時間帯などが写真に織り込まれてしまう。モノクロ写真ではそれらに付随して呼び起こされる感覚を排除することができるのだ。カラー写真から得る印象のうち、環境光の影響は非常に大きい。被写体を照らす光線の色は、意図せずとも写真を見る人の感覚を共鳴させてしまい、写真の中にある種のだらしなさや切なさなどを引きずり込んでしまう。西日に照らされた被写体は午後のけだるさや退屈感を呼び起こし、天候が悪い日に撮影された画像は憂鬱感を呼び起こす。モノクロ写真の被写体になるのは大抵、被写体の存在そのものなのであって、こういった場合は天候や時間帯などの情報は無用なのである。撮影したカラー写真を後から見たときに、心で描いていた被写体の印象とはずいぶん異なる場合がある。もちろんカラーの方が記録としてはより正確な画像であるに違いない。だが、自分が持ち帰ったものが被写体の存在感だけだった場合、カラー画像に含まれた余計な情報には違和感を覚えることになる。

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