2010年8月11日水曜日

SC72で赤外カラー

赤外撮影用のフィルターを使ってカラー画像を撮影すると、基本的には真っ赤に写る。前回使った「IR76」の場合、可視光線はほとんど透過しないので、後からグレーポイントを使ってホワイトバランスを補正しても色味がほとんど残らず、モノクロに近い画像になる。彩度を引き上げて無理矢理色味を取り出す方法も試してみたが、画像が荒れてしまい良い画像は得られなかった。他にカラー画像を作る方法としては、フィルター無しで撮影した画像のR/Gチャンネルと赤外画像をそれぞれ任意のRGBチャンネルに割り当てて合成する方法があり、この方法ではコダックのEIRフィルムに似たフォールスカラー画像を作ることができる。前回の最後にやってみたが、色合いが独特で面白い画像が得られるものの、2コマ撮影しなければならないため、時間差による影響が出てしまい、雲や葉っぱなど動いてしまう部分ではどうしても色ずれを起こしてしまう。今回使った「SC72」は、モノクロでは「IR76」ほど赤外効果は強くないが、赤外域以外の可視光線を僅かに透過させる性質があるようで、デジカメでのカラー撮影に向いている。撮影したRAWデータを通常のホワイトバランス(晴天5200K)でカラー現像してみると、画面全体がピンク色だが空や緑などには色味が感じられる。雲の部分を使ってホワイトバランスを補正すると、可視光線の色合いに似た自然な色調が得られ、モノクロの赤外画像のトーンに天然色を被せたような、ちょうど手頃な画像が出来上がる。

 
Nikon D700, Nikkor-UD Auto 20mm F3.5, SC72フィルター使用(富士フイルム)
ピクチャーコントロール[LS] ISO200 F11 10秒
ホワイトバランス:雲の部分でグレーポイント指定

ホワイトバランス補正前の画像
 ピクチャーコントロール[LS] ホワイトバランス:晴天(5200K)

 フィルター無しの通常画像
 ピクチャーコントロール[LS] ISO200 F11 1/320秒
ホワイトバランス:晴天(5200K)


Nikon D700, Nikkor-UD Auto 20mm F3.5, SC72フィルター使用(富士フイルム)
ピクチャーコントロール[LS]/[VI] ISO200/400 F11 10秒

メーカーのデータシートを見るとSC72は可視光線の内、700nm付近の赤色光については透過させるものの、IR76に比べるとカットする波長が違うだけで、カーブの具合もほとんど変わらない。透過限界波長よりもずっと波長が短い緑や青の透過率については、SC72もIR76も0%となっていて、SC72がIR76に比べ、より青や緑を透過させる性質があるなどとは書いてない。つまり、SC72を使ったデジカメ画像に青や緑が再生される理由については、はっきり説明することができない。しかしながら、今やっていることは、そもそもセンサーに赤外カットフィルターが装着されているデジカメに対して大量露光を行ない、デジカメ側のフィルターがカットしきれない僅かな漏れ光線を使って赤外画像を得ようとしているのである。この成果を期待するならば、デジカメに使われている赤外カットフィルターと同じ光学フィルターであるSC/IRフィルターもまた、大量露光によってバンド外の可視光線を一定量透過したとしても責める理由はないし、不思議にも値しないのである。SC/IRフィルターにとっては、こともあろうに赤外カットフィルターが装着されているデバイスに対して使用されるというのは想定外であるに違いない。

前回は35mmレンズとゼラチンフィルターホルダーAF-1(52mm径用)を使ったが、今回は20mmレンズなので別のホルダーを使った。フィルター径72mmの20mm広角レンズに、76mm角のゼラチンフィルターを使うのは元々無理があるのだが、77mmかぶせ式のマミヤRB用ホルダーならなんとかいけそうだったので、これを72mm→77mmのステップアップリングを使って装着して使ってみた。撮影画像を見ると両端がケラレているが、ホルダーの中枠を削ればいけそうな気がする。なお、今回は赤外指標によるピント補正を行なっていない。可視光線による像も含まれているのと、20mmレンズで絞り込んでいるせいだと思うが、ピント補正を行なった場合もあまり差はなかった。

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