2010年2月15日月曜日

ペンEEをきれいにする レンズ編

前回、前玉化粧リング外すことができなかったが、やっと外すことできた。早速レンズをきれいにしよう。化粧リングやレンズ固定リングの切り溝を回すためには、本来はレンズレンチ、あるいはカニ目回しなどと言われている工具が必要になる。だがそれは持っていない。コンパスやピンセット、マイナスドライバー2本などで外せる場合もあるが、工具が滑るとレンズを傷つけたり切り溝を潰してしまう。すでに前回、マイナスドライバーで2~3度失敗してしまい、化粧リングに傷をつけてしまった。今回は、最終的にこんな道具で外すことができた。

T字型のスライドが付いたステンレス製の定規を
Gクランププライヤー2個ではさんだもの。
これで化粧リングとレンズ固定リングを回す。

まず化粧リングを外す。

銀色のリングを外す。

サークルアイ部分が外れる。
セレン光電池のリード線が本体とつながっているので注意しなければならない。

前玉のレンズ固定リングを外す。

レンズユニットを外そうとしたところ、どうやら上カバーを先に外さなければならないことが分かった。上カバーを先に外す。なお、2枚目のレンズはレンズユニットをボディにつけたまま緩めるのが正解だったが、今回は先にレンズユニットを外してしまった。

レンズユニットは3本のマイナスネジでボディに取り付けられている。
レンズ鏡筒と絞りが一体になっている。
ボディとの間にスプリングなどのリンク部品は無い。
シャッターボタンを押すと、ボディ側の段カム左端がレンズユニットの絞りレバーを下に押す仕組み。

レンズユニットとボディの間には、リング状のスペーサーが2枚入っている。
組み立て時に角度や順序を間違えることがないように保管。


レンズユニットとスペーサーを取り外した状態。
ビハインドシャッターなのでこれより奥にレンズは無い。
シャッターに不具合はなく、見た目もきれいなので今回は手を付けない。

取り外したレンズユニット前面。
てっぺんやや左の真鍮製の部品が絞りレバー。
スプリングで絞る方向にテンションがかかっている。
右の突起に板バネが付いていて、サークルアイ部のクリックストップになる。

レンズユニットを逆さにすると最前面の玉が外れる。

取り外したレンズユニット後側
今回は外さなかったが、後玉を取り出すには多分このカニ目を開ける

2枚目のレンズはリングごと外れるが、レンズユニットを取り外した状態では緩めることができなかったので、レンズユニットをいったんボディに戻した。

2枚目のレンズを外す。
最前面と2枚目のレンズは単レンズ。
前群2枚にはひどい汚れやカビはなかった。

絞りレバーを押して後群レンズ表面にアクセスする。
D.Zuiko 2.8cm F3.5は
3群4枚のテッサータイプで
後玉が2枚貼り合わせレンズだ。

この面がひどい。カビでコーティングがやられていて完全にきれいにすることはできないが、
アルコールでカビや汚れをよく拭いておこう。

絞り羽根の根元に錆びがあったのでアルコールで拭いたところ、カスレが出て動きが悪くなった。ここは油を注してはならない箇所だが、鉛筆を塗ればスルスル動くようになる。

後玉クリーニング後。少しクモリが残る箇所があるが、十分クリアーだ。

しっかり組み立て直してから動作確認。EEもマニュアル絞りもちゃんと機能する。サークルアイ部分は薄くグリスを塗ってから取り付けたので回転もスムーズだ。化粧リングやレンズ固定リングの切り溝につけてしまった傷は、マジックインキでタッチアップしてごまかすことにしよう。使い込まれたことによる外装の傷みは風情にもなるが、素人の分解痕だけはみっともないので。
さて、気になっていた撮影レンズのクリーニングもできたので、ペンEEをきれいにする件はこれにてすべて完了だ。きれいになったレンズの写りが楽しみだ。

2010年2月9日火曜日

ペンEEをきれいにする モルト編

今回は残りの作業を終わらせる。前回、ファインダーを清掃するために黒い遮光紙を剥がしてしまったので、代わりに黒い紙テープを貼る。

フィルムカウンターのプラスチック窓が最初から剥がれていたので接着しなければならない。古い接着剤のあとをきれいにしてから丸窓を接着する。接着剤はこの透明なやつを使おう。黄色のボンドG17の透明バージョンだと思う。

ちゃんとしたモルトを買ってきて貼るつもりだったが、やっぱり書道のフェルトにする。このカメラにはこっちの方が似合うと思う。


ファインダーアイピース周りは隙間がある。ゴミが入りそうなだけではなく、ここから漏光もしそうなのでここにも貼る。ボディ側上部は貼りにくいので上カバーを外して貼った後、上カバーを取り付けて整える。

赤線部分がモルトが必要な部分。書道用のフェルトを2mm幅に切って使った。
本来、側面にもモルトがついているのかも知れないが、なくても平気なので貼らない。

一見するとただの汚いカメラに見えるかも知れない。
だが、当初のむごたらしさと比較すれば、ものすごくきれいになっている。

今回はとりあえずこれですべて終了。本当は撮影レンズの清掃がしたいのだが、俺が持っている道具ではどうしてもレンズを外すことができなかった。カニ目レンチみたいなものがあればもう少し力をかけることができると思うが、化粧リングや前玉の留め枠が固着しているのかもしれない。CRCやアルコールをたらして染み込ませれば回るかもしれないが、それらがレンズや絞り羽根など回りこんで付着してしまうと、レンズを外すのに失敗した場合は清掃できなくなり再起不能になってしまう。確実に取り外せる工具が入手できるまでこのまま使おう。

2010年2月7日日曜日

ペンEEをきれいにする 外装編

先日、秋葉原N店用品館で入手したペンEE。まるで廃墟に長年放置されていたかのように汚い。こんなにずたぼろだが、これで完全に動作する。セレンも赤ベロも問題なく、露出も極めて正確で、ピントもコマ間も問題ない。そういうわけで、今回はこれをきれいにする。


ファインダーカバーのアルミが腐食してボロボロになっている。上下のカバーの表面には、塩分だかカルシウムだか何だか分からない白いカピカピの物質がたくさんこびりついている。赤錆びや緑青は使われなくなってから発生したものに違いないが、塗装のはがれや鉄部の赤錆びはボディ右手側に多い。このカメラは間違いなく猛烈に使い込まれている。

白いカピカピは底蓋右手側の角、ちょうど手のひらに当たる部分に最も多く沈着している。この物質は使用者の汗から析出したものなのだろうか。

ファインダーも清掃したいし、内部の様子も確認したい。とりあえず上カバーを外すため、分解にとりかかる。

カニ目は逆ネジ。丸窓のプラスチックは内部で剥がれていた。

フィルムカウンターのカニ目が逆ネジなのは、PENシリーズをお使いの方やジャンクファンにはお馴染みだろう。専用の道具がないのでピンセットを削った物を使う。このネジがまた異様に固い。あちこち塩やら錆びやらが噴出しているカメラなのでネジが固着していてもおかしくはない。壊さないように様子を見ながら力を加減する。やっと外れた。巻き戻しノブは、クランクの板バネを外してからパトローネ側の軸を固定してノブを回せば軸が抜ける。残りはネジ3本で、難しいことは何もないはずだった。だが、どうしたことか右側面のネジが回らない。ドライバーを変えながらがんばっても、塩と緑青に埋まってひどく固着している。

このネジが完全に固着。

ドリルで削り取った。

慎重かつ大胆に作業し、見事にネジが潰れた。もう絶対に回らない。今後のメンテナンスを考えると上カバーはどうしても開けたい。もう仕方が無い。ドリルでネジ頭を削り取ることにした。ボディ側のネジ穴は埋まってしまったので、古いネジもろとも細い穴をあけて貫通させておこう。

やっと上カバーが外れた。ファインダーのレンズは綿棒とアルコールで清掃した後、内部機構をしげしげと観察する。


これが有名な段カムである。プログラム線図がそのまま金属板になっている。シャッターボタンを押しこむとこの段カムが上昇して階段のどこかで真ちゅう製のメーター針を押さえこみ、その停止位置でシャッタースピードと絞りがコントロールされるのである。そして、この部品の延長線上にはファインダーがあり、あの赤ベロもこれに連動している。

メーター針が階段の両側に外れたとき段カムは更に上昇してファインダーに赤ベロを出現させるのだ。すごい。すごすぎる。

観察が終了したところで、上下カバーをきれいにする。ファインダーカバーの腐ったアルミ部分を小さな金属ブラシでこすると、微粒子の粉末が舞い上がる。これを吸い込んではいけない気がする。クリームをつけよう。緑青や鉄部の赤錆もろとも100円ショップの錆び取りクリームなるものをつけて金属ブラシでこすりとる。

クリームでは白いカピカピは取れなかったので割り箸でこするも、この物質は何なんだろう。簡単には取れない。歯医者さんのスケーラーのような工具があったので、それでこそぎ取ると白い粉になってだんだん取れてくる。

この作業に4~5時間!
歯医者さんでやる歯石取りにそっくりな作業。

これでガリガリやってもクロムメッキは平気みたいだ。だがこれは時間がかかる。4~5時間がんばった。遂に上下カバーと巻き戻しクランクに付着した白いカピカピをこそぎ取ることができた。砥石やバフ、金属ブラシなどがセットになったミニルーターセットが安く売られている。あれを買っておくべきだった。

底蓋のモルトもガビガビなのでついでにこそぎ取る。あとで何か貼ろう。今日はこれまで。
おっと。何か忘れてる。潰れたネジを直しておかなければ。

穴に合いそうなネジを2本探す。これにしよう。一本はネジの側面を削ってねじ切りタップにするのだ。

上の細いところが割れないよう慎重に。タップを回しては戻し。できた。

簡易タップでこしらえたネジ穴。
それにしても、この
塩みたいな物質がカバーの下にまで噴出している。

ためしにカバーをかぶせて代用のネジを取り付けてみる。
うん。良さそうだ。

上カバー クリーニング後

上カバー前面 クリーニング後
腐食によるファインダーカバーのでこぼこはどうしようもない。

底蓋 クリーニング後

裏蓋 モルト剥がし後

圧板のデートコード。正しい見方はわからないが、
おそらく1963年の第11週という意味ではないだろうか。

残りは、ファインダーを清掃する際にはがした遮光紙を貼らなければいけないのと、フィルムカウンター窓の接着、そしてモルトを貼る。このカメラは毛糸やフェルトなどの代用品では蓋が閉まらなくなるかもしれない。モルトを買ってこなければ。モルトが終わったら、撮影レンズやサークルアイ部分も外してクリーニングしよう。

2010年2月5日金曜日

オリンパス ペンEEのプログラム線図

ペンEEのプログラムEEが具体的にどう働くかについての情報を見つけることができなかったので、露出計や電球などを使って自分で調べてみた。シャッタースピードは二速しか無いので押してみればわかるが、絞りについてはEE時にシャッターボタンを押し込んだ状態で開口具合をチェックし、絞りをマニュアル設定した場合の開口具合と比較しながらF値を推測しなければならなかった。実際の動作には多少のばらつきがあり、毎回必ずしも同じ値に制御されるわけではないが、とりあえず下図のようになった。撮影時の参考にするために、F4~F22時の被写界深度(合焦範囲)も記入した。

オリンパス ペンEE(後期型 2速タイプ)のプログラム線図
赤線範囲外のEV値では赤ベロ。

許容錯乱円(CoC)はA4出力に対応したサイズだが、
L判程度の出力なら合焦範囲はもっとずっと広いはず。

ISO(ASA)100の場合、EV12までは低速側のシャッタースピード1/30秒が用いられ、EV13で高速側のシャッタースピード1/250秒へシフトする。ISO(ASA)200ではEV11まで低速側のシャッタースピード1/30秒が用いられる。絞りをマニュアル設定する場合は常に1/30秒となる。驚いたのは、今回入手したずたぼろのペンEEの示す露出値が非常に正確だったことだ。セレンが生きているだけでも幸運だが、このペンEEはどのEV値でも、反射光式の露出計で測った値とほぼ同じにシャッタースピードと絞り値が制御されていた。

オリンパス ペンEE

秋葉原N店・用品館でずたぼろのペンEEを入手。実は去年の後半あたりからずっと、ペンEEを探していた。ペンEEにはいくつかタイプがあるが、ちょうど所望していたシンプルな固定焦点のタイプを見つけた。EEシリーズのジャンク品は、分解されてひどい状態になっているものも少なくないが、この品は見かけはひどいものの機能上の問題は見当たらなかった。800円だった。

OLYMPUS PEN-EE(後期型)
800円(研究用) 秋葉原N店用品館

アルミのファインダーカバーの腐食がひどくボロボロだ。塗装もハゲハゲで鉄部には赤錆が、めっきもぷつぷつだらけで緑青を噴いている箇所もある。一見すると廃墟にでも放置されていたような品物だが、不思議なことに撮影レンズとファインダーはきれいで、赤ベロもちゃんと出るし動作に渋いところなど何一つ無い。このまま使えそうだ。バッグに持っていた濡れティッシュで赤錆や汚れを軽く拭き取り、今買ってきたネオパン400PRESTOを入れて撮りながら帰ることにした。しまった。PEN-EEはASA200までしか対応していない。100ACROSにすればよかった。一段オーバーだが仕方ない。
さて、撮り終えたフィルムをミクロファインで一段減感しなければならない。だがデータが無い。仕方ないので適当に現像時間を減らし、22℃のところ24℃の時間で現像してみた。

しまった。ちょっと薄かった。これなら減感しなくてもよかった。

現像が適当なのでイマイチ分かりにくいが、とりあえず露出は安定しているようだ。PEN-EEのレンズ性能を見たいので、CanoScan8800Fは使わずに、D700とスライドコピアで複写する方法でデジタル化する。レンズはマイクロニッコール55mmF3.5をリバースして使用。薄いネガから無理やり階調を引き伸ばしたのでずいぶん荒れているが、何とか見られる状態になった。


上のコマの中央部を拡大。固定焦点だが遠くまでシャープに写っている。


上のコマの中央部を拡大。こちらも十分な写り。





PEN-EEのピント位置は3.2mに設定されていると言われている。
実写でも概ねそんなところだろうか。

オリンパスペンEE D.Zuiko 2.8cm F3.5
プログラムEE (F3.5~F22 1/30秒または1/250秒)

ネオパン400PRESTO EI200 ミクロファイン1:1希釈 2℃分減感

ペンEEのシャッターは1/60秒単速だと思っていたが、それは初期のものだけで、生産されたものの大部分は二速(1/30, 1/250秒)の後期型だそうだ。このEEも撮影中に二速であることに気付いた。固定焦点なので撮影距離と被写界深度に気をつけて撮影しなければならないが、ピントの合っている部分は十分にシャープだった。D.Zuko 2.8cmF3.5は逆光でも思ったよりフレアも少なく良く写る。面白いのは、同じような明るさ・距離で撮影したにもかかわらず、被写界深度がかなり異なって写る場合があることだ。これはシャッタースピードが2速しかなく、低速側から高速側にシフトするポイントでは被写界深度が急に変化するからに他ならない。ペンEEのプログラム線図を見つけることはできないが、例えばEV11ではF11,1/30秒だがEV12になるとF5.6,1/250秒、といった具合に変化することになる。被写界深度に依存した近距離撮影では描写に大きな違いが現れるので注意が必要だ。また、1/30秒から1/250秒へシフトするのは晴天屋外などのかなり明るい場合と考えられ、日陰や曇天時などにあっては手ブレに注意が必要だ。

2010年2月1日月曜日

モノクロ一本

35mm判のモノクロは久しぶりだ。35mm判はD700で間に合っているが、モノクロだけはフィルムに限る。そういえば最近はブローニーばかりで、家には35mmフィルムが無い。ちょっくらフィルムを買いに秋葉原へ。







Nikon F3HP, Nikkor UD Auto 20mm F3.5
ネオパン400PRESTO ミクロファイン1:1 25℃
CanoScan8800F 1200dpi