2018年3月20日火曜日

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi / D850で赤外写真

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi 

小型の自由雲台SUNWAYFOTO 「FB-28iDDHi」を入手。ベルボン「UTC-63」三脚に付属している自由雲台「QHD-S6Q」と交換してみることにした。現在、QHD-S6Q雲台にはMENGSのパノラマクランプ「PAN-C1」を乗せて使っているが、この組み合わせをFB-28iDDHiに変更することで、高さを45mm低く、重量を220g軽くすることができる。

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi

左:SUNWAYFOTO FB-28iDDHi (重量247g・高さ78mm)
右:ベルボンQHD-S6Q+MENGSパノラマクランプ「PAN-C1」(重量467g・高さ123mm)

FB-28iDDHiの最大耐荷重はスペック上は6kgとなっているが、取説では最大耐荷重の5分の1程度で使用することが推奨されており、実用上もその程度と思われる。FB-28iDDHiは、同社のFB-28iの上部がDDH-06パンニングクランプになっているモデルで、クランプや水平パンのロックはMENGSよりもこちらの方がしっかりしている。届いた当初は、DDH-06のパンロックを解除した状態でのパン操作が非常に固く、自分で少し調整する必要があった。DDH-06パンニングクランプを雲台から取り外してみるとパンの固さは無く、スムーズに動かすことができるため、雲台に取り付ける力でDDH-06が圧迫されているようだ。DDH-06を取り外した状態で、上部のリング状のネジをコイン状の工具を使ってほんの少し緩めてから、元のM4ネジで雲台にしっかりと取り付けなおしたところ、パンの固さは無くなりスムーズに回転させることができるようになった。

FB-28iDDHi雲台の底部は3/8”(大ネジ)になっている。1/4”ねじ(小ねじ)への変換アダプターの裾を逃がす凹みのような構造はあるが、付属している変換アダプターを取り付けるとアダプターの裾が出っ張ってしまい、三脚に取り付けると隙間が空いてしまう。いくつか別の変換アダプターを試してみたがどのアダプターを使っても出っ張らずに取り付けられるものは無かった。SUNWAYFOTOのレベリングベース「DYH-66i」に付属していた被せ式で裾の無い変換アダプターも試してみたが、雲台側のネジ穴が浅く、アダプターが底に支えてしまう。裾の無いイモネジ型の変換アダプターもどこかにあったと思うが見当たらない。

UTC-63三脚側はこんなふうになっている。せめて三脚側に変換アダプターの裾を逃がす凹みがあればいいのだが、今回はそれが無い。

あまりやりたくないが、以前こんな時に使ったことのあるでっかいワッシャーがある。仕方がないのでこれを使おう。

変更前

ベルボン UTC-63+QHD-S6Q+MENGS PAN-C1

変更後

ベルボン UTC-63+SUNWAYFOTO FB-28iDDHi


UTC-63三脚の脚をひっくり返して収納する際に、FB-28iDDHi雲台はうまく脚の隙間に入れることができる。脚は完全に閉じることができ、運搬時にグリグリ強く当たるような箇所も無い。

ベルボンUTC-63三脚にSUNWAYFOTO FB-28iDDHi雲台を取り付けたものは、構造がシンプルになり見た目はスマートになっている。元のQHD-S6Qの方がサイズも大きくしっかりした雲台なので、FB-28iDDHi雲台に交換することによる強度的なメリットは無い。雲台自体が小型なので高さが低く抑えられ、剛性感の低下をなんとか免れているという形になっている。それでもこの雲台に交換したのには、二つ目的がある。一つはMENGS PAN-C1のクランプとパノラマ回転台の固定力に不安があったことだ。この点についてはFB-28iDDHの方が明らかに良い。もう一つの目的は、パノラマ回転台と水平パン機構の両方を持つ自由雲台であれば、例の水平出し操作を雲台単体でおこなうことができることを実践するためだ。

例の水平出し操作とは?

この方法では、自由雲台を使う場合に最大のストレスとなる左右の微妙な傾き調整を、簡単でスムーズに行うことができる。カメラの重量を手で支える必要がなく、手を放してもガクンと倒れる心配がない。ボールを半締めにしたままカメラを動かす場合のようなバックラッシュを生じることもない。FB-28iDDHiでこの操作をやってみたところ、充分快適に行うことができる。


D850で赤外写真

D850で赤外フィルターを初めて使ってみたが、D850はD800Eよりも約一段分、赤外感度が高いことがわかった。IR-76フィルター使用時は、晴天でISO800・F8・30秒がD800Eでの標準露出だったが、D850だとISO400で同じくらいの明るさに写る。SC-72フィルターの場合はこれよりもシャッタースピードを一段上げた1/15秒が適当だ。また、SC-72フィルターを使った際の発色がD800EとD850では少々異なることも分かった。SC-72フィルターの画像は現像時に雲の影部分や舗装路面をポイントしてWBを合わせるが、D800Eの場合この方法で晴天時の青空を水色にすることができ、植物の緑や路面の色合いも肉眼に近い色相になる。
D800EでSC-72フィルターを使用した例

同じ方法でWBを調整したD850の画像では、植物の緑や路面のグレーはあまり変わらないが、晴天の空がどぎつい青紫色になる。IR-76フィルター使用時の発色はあまり違いは無いが、D850の方がモノクロ味がやや強く、セピア~無彩色の落ち着いた色調になるようだ。赤外域の感度分布がこれまでのセンサーとは異なっているのかも知れない。なお、D800Eと同じくD850でもピント補正をするのはIR-76の場合だけで、SC-72ではフィルター無しと同じピントで位置で撮影している。

以下D850にて。
フィルター無し:ISO400 F8, 1/1250秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒

フィルター無し:ISO400 F8, 1/1000秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

フィルター無し:ISO400 F4, 1/2500秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒
Nikon D850, Nikkor-UD Auto 20mm F3.5

2018年2月13日火曜日

RAW現像ソフト Capture NX-D vs DxO PhotoLab/Adobe Camera Raw

DxO PhotoLabの試用期限が切れてしまった。DxO PhotoLabはコントロールポイントを使った部分補正が使えるなど、良い点もあるのだが、コントラストやシャープネスのコントロールが独特で、パッケージ版の購入は保留している。以前、D800Eを使い始めた最初の頃まではLightroomを使っていたが、Adobe Camera RAW(ACR)とCamera Calibrationの出来が悪く、黄色浮きした色調と不自然に明るくなってしまう暗部が気に入らなかった。また、メーカー純正ソフトに比べると細部の解像が不自然で、人工物の斜め線が階段状に解像してしまうのも気に入らず、ACRでのRAW現像はやめてしまった。ニコンの落ち着いた渋い色調と写真らしい自然な階調は気に入っているので、ADLへの対応やレンズ補正の完成度などの点からも、その後は純正現像ソフトのCapture NX2を使っていたが、Capture NX-2のサポートは打ち切られてしまい、以降はCapture NX-Dを使っていた。Capture NX-DはADLなどカメラ側で設定できる機能のすべてをサポートし、ニコンのピクチャーコントロールに従った画像を出力することができるが、シャープネスのコントロールとノイズリダクションが貧弱で、出力される画像の品質には不満がある。ちょっとした思い付きで、D850のRAWをACRで現像してみたところ、思ったより悪くない。Adobe Creative Cloud コンプリートプランの導入も検討してみようと思う。

デフォルトのパラメータ同士では各々の現像ソフトの個性が強すぎ、本来は比較はできないのだが、なるべく似たような階調になるようにしつつ、各々のソフトでできるだけ解像感が出るようにシャープのパラメータとノイズリダクションを調整してみた。

Capture NX-D 1.4.6 ノーマル現像
画像クリックで元サイズ画像(5408x3600pix)を表示
ピクチャーコントロール:[SD]スタンダード
パラメータはすべてデフォルト

Capture NX-D 1.4.6
画像クリックで元サイズ画像(5408x3600pix)を表示
ピクチャーコントロール:[SD]スタンダード, 輪郭強調=0, 明瞭度=1
アンシャープマスク:適用量=100, 半径=2, しきい値=0
ノイズリダクション:処理方法=高画質2013, 輝度 適用量=50, シャープネス=52, カラー 適用量=50, シャープネス=52
カメラとレンズの補正:倍率色収差補正=ON, 軸上色収差補正=OFF, ヴィネットコントロール=50

DxO PhotoLab 1.1.1
画像クリックで元サイズ画像(5408x3600pix)を表示
プリセット DxO標準→DxO Smart Lighting=OFF, DxO ClearView=OFF
ノイズ除去:RAW PRIME, 輝度ノイズ=40
ヴィネット:DxO光学モジュールで自動補正
レンズシャープネス:グローバル=0, ディテール=50, ボケ表現=50
色収差:自動倍率色収差補正=ON
他の種類の倍率色収差補正:強さ=100, サイズ=10, パープルフリンジ=OFF

Adobe Phoshop CC, Camera Raw 10.1
画像クリックで元サイズ画像(5408x3600pix)を表示
カメラキャリブレーション:処理=バージョン4(現在), 名前=Camera Standard
シャープ:適用量=100, 半径=0.7, ディテール=18, マスク=0
ノイズ軽減:輝度=50, 輝度のディテール=100, 輝度のコントラスト=0
レンズ補正:色収差を除去, プロファイル補正を使用=しない

共通データ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR, Nikon D850
f=500mm(DXクロップ 750mm相当)ISO400, F8.0, 14bit ロスレス圧縮RAW

Capture NX-Dは解像感やNRという点では一歩劣り、DxO PhotoLabは見た目の解像感はあるが、アウトフォーカス部分の滑らかさに対し、ピントが合った部分のザラつきが気になる。鳥のフワフワした質感がきれいに出ているのはAdobe Camera Rawで、シャープネスにもザラつきがなく上品な等倍画像になっている。AdobeのNRは以前から優秀で、DxO自慢のPRIMEモードと比べても遜色は無いように見える。Capture NX-DのNRはあまり上等ではなく、解像感を優先するとノイズはほぼ残す方向になる。Adobe Camera RawのCamera Calibration「スタンダード」は、純正のCapture NX-Dに対しやや彩度とコントラストが低い画像になるようだ。D850のピクチャーコントロール「スタンダード」のデフォルトは明瞭度が0ではなく1に設定されているためだろう、ローカルコントラストの印象にも違いはあるが、そこらへんは良い悪いではなく単にパラメータの違いでしかない。

2018年2月11日日曜日

この鳥何だ

せめて「ホーホケキョ」と鳴いてくれたら素人の俺にでもすぐにわかるのだが、藪の中から聞こえるのは「ジュッ。ジュッ。」という鳴き声だ。時々チラっと姿が見えるものの動きが素早く、すぐに藪の下の方に潜ってしまう。大きさやシルエットはメジロのようだが色が黒っぽい?


やっと見えた。ウグイス。

一時間以上粘ってやっと姿を見ることができた。ほほう。凛々しい顔立ちをしているではないか。
Nikon D850, AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR(ピクセル等倍クロップ)
ISO400, F8.0, 現像ソフト:DxO PhotoLab

こちらはCapture NX-Dにて現像。同じくピクセル等倍クロップ。NX-DとDxOの等倍画像を比較すると、DxO PhotoLabの優れた解像感とノイズリダクションの優秀さは際立っている。

寒い日が続き、メジロの姿が見えなかったが夕方になるとヨシの藪へ降りてきた。

アオジ。この前もそうだったが、なぜか森に着いたらすぐに出迎えに来てくれる。姿を見せるのは一度きりで戻っては来ない。これは先週の画像。

アオジの画像は中央が暗かったのでDxO PhotoLabのコントロールポイントを使って補正している。
元画像。Capture NX-Dで現像し50%に縮小後、中央部を長辺1600ピクセルでクロップ。

コントロールポイントによる部分補正は、かつてニコンの純正現像ソフト「Capture NX2」に搭載されていたNik SoftwareのU Pointテクノロジーの機能だが、Nik Softwareは2012年にGoogleに買収され、ニコンの純正現像ソフトが市川ソフトラボラトリーのSILKYPIXをベースにした「Capture NX-D」に変更された際にニコンの現像ソフトからはこの機能は無くなってしまった。昨年DxOがGoogleからNik Collectionの権利を取得し、現在はDxO PhotoLabでU Point テクノロジーが使用できるようになっている。


2018年2月3日土曜日

新型レベラー(改)

この前作った「新型レベラー」は、気泡式のレベラーに紙筒とレンズをパーマセルテープでくっつけただけのもので、縦位置用の気泡管が見辛かった。縦位置・横位置に合わせて2本の気泡管が各々正面からよく見えるように、レンズをスライド式に改造した。

新型レベラー(改)

まあ要するに、覗くとでっかく見えるというだけのものだが、単純な工作の割に実用性が高く、ものすごく便利で役に立っている。

縦位置時

横位置時

アルミの銀の筒の材料は蛍光灯の点灯管のケースを流用した。パイプカッターで先端を切り落とし、ハサミやらペンチやらを駆使して加工。
どうよ。地味だがそこそこ良く出来たではないか。


2018年1月31日水曜日

皆既月食

同じ月に2回満月が見られるときに2回目の満月をブルームーンと言うそうだ。青く見えるわけではないそうで、むしろ皆既月食で赤くなったのを確認した。

ISO100 F8.0 1/100秒

Nikon D850, AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR, 
f=500mm ISO1600 F8.0 1秒

皆既月食には何だか不思議なイメージがある。今回は特段気づいた事は無かったが、過去の記録をあさってみると2011年の月食の日には不思議な気象現象を観測している。

2018年1月27日土曜日

パノラマ雲台を使い自由雲台で左右の傾きを微調整する方法

前回はベルボンのプレシジョンレベラーを使ったが、シンプルにパノラマ雲台を使った方が高さが抑えられるので、今回はこれを使う。ベルボンUTC-63三脚に付属している雲台はQHD-S6Qという自由雲台だ。自由雲台の問題は、微妙な水平出しが難しいことだ。ふつう風景や物撮りでは上下の水平は構図によって任意のためあまり厳密ではないが、左右の傾きは見苦しくなるので無くさなければならない。自由雲台は、ボールの固定を緩めるとすべての方向がフリーになり、3ウェイ雲台のように左右の傾きだけを調整するという操作ができないので、水平出しの際には必ず同時に構図も合わせ直さなければならない。逆も同じで、この雲台はボールとは別に水平パン軸を持っているものの、上下方向についてほんの少しでも構図を変えようとすれば、同時に毎回必ず水平出しの操作が必要になる。QHD-S6Q自由雲台には、緩めた際にガクンと倒れないように、緩め幅を制限する機構は付いているが、半締めの抵抗がかかった状態でカメラを動かすとバックラッシュが生じ、細かい調整をするのには思いのほか手間と時間がかかる。また、緩めすぎると構図も大きくズレてしまい、一からやり直しとなる。UTC-63三脚の雲台はもちろん交換可能だが、規定の収納性能を発揮させるためにも付属のQHD-S6Q雲台を使わないのは惜しい。そこで今回のこの方法だ。UTC-63三脚に付属しているQHD-S6Qのような、水平独立パンのできる自由雲台にこれを乗っけることにより、画期的な方法で左右の傾きを微調整することができる。

MENGS PAN-C1 パノラマ式クランプ


パノラマ雲台を使い自由雲台で左右の傾きを微調整する方法

三脚をほんの少しだけ前傾に設置し、自由雲台のボール固定ノブを操作して構図を合わせる。カメラが上向きや下向きになるような構図では、三脚を前傾に設置する必要は無い。三脚を前傾(あるいは後傾でも構わない)に設置する必要があるのは水平線が上下の真ん中になる構図をとる場合だけ。三脚がほとんど垂直に立っていると雲台を回しても左右の傾きが変化しないからだ。アイレベル程度の高さなら三脚の前の脚を2センチほど縮めれば良く、重量バランスが不安になる程露骨に前傾にする必要は無い。石突が滑らない状況であれば、前脚を少し閉じて引く(後傾)方法でも代用できる。

この状態で、パノラマ回転台と、自由雲台の水平パン軸のロックを解除し、回転フリーの状態にする。

カメラが前方を向いたままになるようにつかんで固定し、もう片方の手で雲台をつかんで左右に少し回転させると、左右方向の傾きを微妙に変化させることができる。

雲台部分を右に回転させると、カメラを左に傾けることができる。

雲台部分を左に回転させるとカメラを右に傾けることができる。

スリックのフリーターン雲台の水平出し操作に似ているが、自由雲台とパノラマ雲台を使うこの方法では、カメラの重量を手で支える必要がない。手を放してもカメラがガクンと倒れる心配が無く、重量のある望遠レンズを装着した場合にも左右方向の微妙な傾き調整をゆっくりと安全におこなうことができる。雲台ごと水平回転させる動作が左右の傾きの変化に変換されるので、グリスの効いたじんわりとした微妙な操作ができる上に、バックラッシュを生じることもない。構図が水平方向にズレることはあるが、これを戻すのはパノラマ回転台で水平方向を修正するだけなので簡単だ。先日開発した新型レベラーと合わせ、これで自由雲台での水平出しが一層捗るというわけだ。

パノラマ雲台について
Amazonでパノラマ雲台を探すと安価な中国製の物がたくさん見つかるが、中には「三脚や雲台に乗せネジを締め付けると回転できなくなる」などというおかしな構造のものもあるようで選定が難しい。今回手に入れたのは「MENGS PAN-C1」という品物だ。

 
MENGSブランドの品は初めて手にしたが、意外に精密感があり、機能上も問題なく使用可能。商品説明には書いて無かったが、届いた品には1/4~3/8インチの変換ネジがちゃんと付属していた。回転もスムーズでロックもしっかりできるし、水準器もおかしくない。耐荷重は5kgとなっており鵜呑みにはできないが、鉛直に重みが掛かるように使う分には問題は無さそうだ。回転ロック機構は見ての通り重量を支えるような構造ではないので、これを縦にしてジンバルの軸に使ったりするのは危険と思われる。


2018年1月19日金曜日

ベルボン プレシジョンレベラーを自由雲台に付ける

ベルボンUTC-63三脚に付属している雲台はQHD-S6Qという自由雲台だ。この三脚の雲台はもちろん交換可能だが、規定の収納性能を発揮させるためにも付属のQHD-S6Q雲台を使わないのは惜しい。自由雲台の問題は、微妙な水平出しが難しいことだ。ふつう風景や物撮りでは上下の水平は構図によって任意のためあまり厳密ではないが、左右の傾きは見苦しくなるので無くさなければならない。自由雲台は、ボールの固定を緩めるとすべての方向がフリーになり、3ウェイ雲台のように左右の傾きだけを調整するという操作ができないので、水平出しの際には必ず同時に構図も合わせ直さなければならない。逆も同じで、この雲台はボールとは別に水平パン軸を持っているものの、上下方向についてほんの少しでも構図を変えようとすれば、同時に毎回必ず水平出しの操作が必要になる。QHD-S6Q自由雲台には、緩めた際にガクンと倒れないように、緩め幅を制限する機構は付いているが、半締めの抵抗がかかった状態でカメラを動かすとバックラッシュが生じ、細かい調整をするのには思いのほか手間と時間がかかる。また、緩めすぎると構図も大きくズレてしまい、一からやり直しとなる。

ベルボン プレシジョンレベラー

こういった自由雲台でありがちな水平出し操作の難しさを解決するために、要するに雲台の上にこれを乗っけようとしているのである。スリックの2軸微動雲台「SMH-250」も検討したが、今回はパノラマ回転台としても使えるこっちのベルボン「プレシジョンレベラー」になった。

本来はパノラマや動画撮影のために三脚と雲台の間に入れることを想定した製品だが、今回はそにに入れても意味がない。雲台の上に乗せる。

カメラを乗せるために、INPONのクランプを取り付けようとしたが、クランプのノブがプレシジョンレベラーの水準器やパノラマ回転台回りの構造に当たってしまう。パノラマ回転台の方を回してねじ込めば取り付けは可能だが、プレートを一回転させることができない。プレシジョンレベラーに付属しているゴムプレートを挟んでみたが、やっぱり少し当たる。

しまった。これは想定していなかった。あとで考えよう。とりあえず先へ進む。

使い方1
普通に考えて使い方はこれしかない。

プレシジョンレベラー左側の「アングルストッパー」を緩め、右側の「角度調整ダイヤル」を操作してカメラの傾きをを調整する。プレシジョンレベラーを手に入れる前に疑問だったのは、右側を上げていく機構を完全に下した場合に、丁番の上下はぴったり平行になるのか、微量だけ右に傾けられるのかという点だ。実際のところ、丁番の上下が平行な状態では2ミリ程度の隙間が空く構造になっていて、角度調整ダイヤルが回らなくなるまで下すとほんの僅かに右に傾いた状態になるが、これは右へ傾けられるというよりも丁番の上下が平行になるよう微調整するためのマージンと考えられる。
(上の画像ではINPONのアルカ型クランプの代わりにマンフロットのプレートアダプター394を使っている。これを使うとプレシジョンレベラーの水準器は隠れて見えなくなるが、この使用方法ではプレシジョンレベラーの水準器あまり意味がないので問題は無い。)

使い方2
こっちは不思議な方法で、もしかするとこれが本命かもしれない。プレシジョンレベラーの角度調整ダイヤルは使わない。パノラマ回転台を使う。

三脚をほんの少しだけ前傾に設置し、自由雲台のボール固定ノブを操作して構図を合わせる。三脚を前傾に設置する必要があるのは上下にも水平な構図をとる場合だけ。上向きや下向きになる構図では、三脚を前傾に設置する必要は無い。

この状態で、プレシジョンレベラーのパノラマ回転台と、自由雲台の水平パン軸のロックを解除し、回転フリーの状態にする。

カメラが前方を向いたままになるようにつかんで固定し、もう片方の手で雲台をつかんで左右に少し回転させると、左右方向の傾きを微妙に変化させることができる。
INPONのクランプをゴムプレート無しでプレシジョンレベラーに乗せると、クランプのノブが当たってしまいパノラマ回転台は120度ほどしか回せないが、この操作を行うには十分だ。

雲台部分を左に回転させると、カメラが右に倒れる。

雲台部分を右に回転させると、カメラが左に倒れる。

これは!スリックのフリーターン雲台の水平出し操作に似ている。水平出しの際に緩めるのはパノラマ回転台と雲台の水平パン軸の二か所。雲台ごと水平回転させる動作が左右の傾きの変化に変換されるので、グリスの効いたじんわりとした微妙な操作ができる上に、バックラッシュも生じない。手を放しても倒れる心配が無いので、カメラの重量を手で支える必要がなく、重量のある望遠レンズを装着した場合にも左右方向の微妙な傾き調整をゆっくりと安全におこなうことができる。構図が水平方向にズレることはあるが、これを戻すのはパノラマ回転台で水平方向を修正するだけなので簡単だ。カメラを斜め上や斜め下に向けた構図の場合も、同じ操作で左右の傾きを調整することができる。これ、すごい発見じゃないのか。実は。
ボールヘッドを90度倒して縦位置撮影する場合にはこの方法が使えないが、Lブラケットを使用するならこの方法のままいける。(※注)
先日開発した新型レベラーと組み合わせることで、自由雲台の水平出しが捗るに違いない。
既にお気づきだろう。これをやるにはプレシジョンレベラーである必要は無い。水平パン軸が独立している自由雲台であれば、パノラマヘッドを乗っけるだけでいい。アマゾンで調べてみたところ、独立した水平パン軸とアルカ型クランプのパノラマ回転台を最初から搭載している自由雲台は、マーキンスとSUNWAYFOTOの製品に存在している。それらの製品では追加部品無しでこの操作ができるはずである。

(注)望遠レンズにベルボンのレンズサポーターSPT-1を装着している場合は、縦位置撮影時にボールヘッドを90度倒すしかなく、この方法での傾き調整はできない。