2018年5月10日木曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その4)初回修理後 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED との比較


初期不良で修理をお願いしていたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの修理が完了したので、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDと比較しながらテストしてみた。

Nikon D850, 歪み補正:なし, ヴィネットコントロール:なし
ISO100, ロスレス圧縮RAW 14bit, Capture NX-D 1.4.6W
ピクチャーコントロール:[SD], 輪郭強調=0, 明瞭度=1(デフォルト)
アンシャープマスク:半径=2, 適用量=100
f=24mm/35mm/50mm/70mm

備考:
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、ズームリングを35mmの位置で撮影しても、EXIFの焦点距離は36mmになる。 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの35mm時よりも僅かに画角が狭いことからEXIFの焦点距離表示の方が正しく見え、どちらかと言うとズームリングのプリントがズレている。
絞りによるフォーカスシフトの影響を除外するため、一コマ度にライブビューでコントラストAFを行い、サイレントモードの電子シャッターで撮影している。

オリジナルサイズの画像をダウンロード(F5.6のみ 8256x5504pix)

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

 f=24mm
24mmでは左端に比べ右端の解像が悪い。1段絞り込むと開放で甘かった左端のコントラストが改善される。それ以上絞り込んでもほとんど変化が無い点は興味深い。

 f=36mm

 f=50mm
50mmでは右端が異常なピンボケになっている。左端の解像も悪い。F4.0時だけ、右端のボケが少ないが、このコマだけコントラストAFでの合焦結果が僅かに後ピン方向へズレたものと思われる。

f=70mm
テレ側の中央部の解像力は高くないものの、先代Gとは同程度であり、これは仕様の範囲と思われる。左側より右側の方がやや画質が悪いのは、この個体の片ボケと思われる。
今回のテスト画像では説明することができないが、この新型のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、テレ側近距離では画像がフレアっぽくなりコントラストが低下し、解像力も低下する。最近接撮影距離(CFD)では絞りによりピントが変動するフォーカスシフトが起こる。周辺部の低周波MTF向上のためにコマ収差の除去などを進めた結果、そのトレードオフとして近接撮影での球面収差が大きく残存するような収差バランスになったのだろうか。古い大口径レンズならともかく、非球面レンズや特殊ガラスを多数使い、強力なコンピュータを使って設計された近代的な高級レンズにしては、このフォーカスシフトは珍奇と言える。近接撮影で絞り込んで小物を撮影するような場合、ファインダーでの位相差AFでは確実にピンボケになるため、ライブビューでのコントラストAFを使う必要がある。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは近距離での収差変動が大きいように見え、用途によってはこのレンズが扱い辛いものとなる可能性はある。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

 f=24mm
先代のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは当時、立体感描写のために像面湾曲の補正よりも非点収差の除去を優先するという方針で設計されたという。像面湾曲が顕著で、ワイド側の周辺部はかなりの前ピンになる。そのため、ワイド側は遠距離の風景や建築などを相手にするのが苦手で、フルサイズ周辺部はピンボケになりシャープではない。1200万画素時代のボディならばF11まで絞れば中央部と周辺部の画質差はギリギリ目立たなくなるが、D800系以降の高画素機で使うには厳しいと言える。

f=35mm

f=50mm
一方で、50mm時には中央部からフルサイズ周辺部まで素晴らしい解像力を発揮する。コントラストでは単焦点レンズには劣るものの、コーナーでの解像力は50mm単焦点レンズに匹敵する。像面は完全に平坦ではなく、中央と端の中間(ミッドフレーム)では僅かな解像力の低下を観察することができる。

 f=70mm
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは元より万能レンズではなく、中~近距離でのポートレートやレポーティング用途に特化した仕様である。尖った性格のレンズではあるが、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRのように近接撮影で収差バランスが大きく変動するようなことは無く、そういう意味では扱いやすいレンズといえる。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR vs AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

f=24mm, F2.8
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの左端は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDよりもシャープで、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは右側の片ボケさえなければ周辺画質は向上しているものと見られる。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの周辺部はコマフレアによると思われるコントラストの低下がAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDよりも少ない。

f=24mm, F5.6
24mm F5.6では、中央部は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの方がシャープだが、左端はAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの方がシャープだ。

f=36/35mm F2.8

f=36/35mm, F5.6
やはりAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの右端はボケている。

f=50mm, F2.8

f=50mm, F5.6
50mm時は先代AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの画面端での解像力の高さが際立っている。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは左右端とも画質が悪く、開放から2段絞ったF5.6でも改善せず、右端の異常なボケにも変化は無い。

f=70mm, F2.8

f=70mm, F5.6
70mm時はAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRとAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの画質は中央のシャープネスは及第点で周辺はともに画質は良くない。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの右端は片ボケという以上に、像が二重になっているようで汚い。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは現在2回目の修理に出している。この個体は全ての焦点距離で片ボケが見られ、とりわけ50mm時には左右とも周辺画質が異常である。
再修理から戻り次第、すぐにまたテストを行う予定。
次回:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR (その5)片ボケ 2回目の修理後

2018年5月1日火曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その3)初期不良の巻

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
実は、4月中旬に入手はしていたが、不良品の個体に当たってしまったので、まずは最初の修理が完了するまでの間、前置きの記事で時間を稼いでいた。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)
品物はAmazon経由で大阪の老舗ショップから購入した新品で、一見動作は正常なものの、片ボケと解像不良に加えコントラストAF時のピンボケがひどく、性能云々を評価できる状態ではなかった。片ボケのケースではメーカーとのやりとりが長期化し問題が泥沼化するのは必至で、ショップへの返品をまず考えたものの、ショップ側に責任が無いことは明白なので、泥沼化を覚悟の上でメーカーへ修理に出すことにした。

左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)


前玉はフッ素コートされているが、Amazonでお買い得だったハクバのXC-Proプロテクターを装着する。これも撥水防汚効果と低反射率(0.3%)をうたう。

ショップへの返品をしなかったのはこのレンズが品薄状態なのもあるが、片ボケや解像不良については元から想定内だったのもある。光学系が合格点でも、ズームレンズだとほぼ必ず位相差AFに関する調整は必要になる。いずれにせよ、初回のテスト後にはメーカーへ調整を依頼する必要があるとは思っていた。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRについては海外のレポート記事でも、手に入れたコピー(個体)が「偏心(Decentered)」していたという報告が数多くあり、性能評価についても賛否が大きく分かれていることから、新品の不具合は最も警戒していたのだが、予想が的中する形になった。

偏心を報告しているユーザーは海外に多く見つけられる。
https://www.cameralabs.com/nikon-24-70mm-f2-8e-vr-review/
「私がテスト用に持っていたレンズの最初のコピーが偏心していて、電磁絞りはレンズを止めるときに滑らかで安定した進行を保証しなかった」
「レンズのフロント/バックフォーカスは異なる焦点距離に対して1つのAF微調整値で効果的に補正できなかった」
「あなたが2500ユーロを要するプロフェッショナルグレードのレンズから期待すべきではない大きな迷惑」
「そして、私の2番目のコピーも偏っていることが判明しましたが、これはNikonサービスによって修正されました。」
http://srussenschuck.com/hands-on-review-nikkor-24-70-vr/
「この新しいNikkorズームは、強力なコンピュータ(MTF曲線で表現された)のレンズ設計による解像度向上が、適切な品質保証なしで迅速にどのように低下するかを示す例です。」

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの発売予定日は、元々は2015年8月27日だったが、「お客様により満足していただけるよう」という理由で発売は2か月後の2015年10月22日に変更された。「満足していただけない状態」とはつまり、設計上の目標品質を製造で達成することができない状態を指すものと考えられる。発売してから約1年後の2016年11月には、外観上の不具合を理由にリコールが行われ、この件ではニコンの製品出荷手順に疑問が生じることになったが、一方で対象になる個体ひとつひとつのシリアルナンバーが公開され追跡能力の高さは示されたものの、そのバランスの悪さに違和感を感じさせる一件となった。また、2017年11月の品不足アナウンスも記憶に新しい。発売後の様々なユーザーレポートの結果では、このレンズの性能については否定的な評価が多くを占めており、発売から2年半が経過した現在でも今回手に入れたような品質の製品が出荷されている事実を見ると、発売前に起こった問題が技術的に解決されたのかどうかが怪しくなり、海外サイトの中にはニコンが大量のバックオーダーを抱えていることが乱造の原因だとするものもある。

購入直後の状態
さて、まず購入直後の状態からいこう。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRとAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDで、各々ズームの中間あたりで一般的に最も画質が良いであろうと思われる50mm F5.6で撮影した画像を比較してみる。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
f=50mm F5.6
Nikon D850 ISO200

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f=50mm F5.6
Nikon D850 ISO200
各々コントラストAFで画像中央でフォーカスし、サイレントモード1で無振動撮影している。24-70E VRは右端が極端にボケており、この画像だけでもこのレンズが異常であることがはっきりわかる。VRはONになっているがOFFの場合も同様だった。左端は24-70E VRが良好でコントラストの高い画像になっている。もし右側もこれなら原田氏のお話と合致する。24-70Gはワイド端では遠距離が苦手なレンズだが、50mm時の両端はフレア気味でコントラストの低下はあるものの、非常に良く解像している。
テストでは24mm・50mm・70mmでF2.8~F11の画像を撮影したが、面倒なのでここでは他の画像は割愛する。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、どの焦点距離でも全般に画像右側の解像が悪く、70mmではコントラストAFでは後ピン、位相差AFでは前ピンとなり、撮影した画像はすべてピンボケだった。

長くなったので、一回目の修理の結果は次回で報告したい。
次回:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その4)

2018年4月18日水曜日

AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED

「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」は2008年に発売されたレンズで、2009年の初めに手に入れてから10年近く使っている。4年目に一度SWMが故障して交換したが、9年目の今年、2度目のSWM交換になった。このレンズ、実は去年から故障していたが、そろそろ新型へリニューアルしそうなので修理に出すのを控えていた。どうも新型が出る気配もなさそうなので、先日修理に出すことにした。SWMには寿命があると言われており、確かにこのレンズは手持ちのAF-Sタイプのレンズ中では一番古い品物だが、モーターが壊れる故障は-しかも2回も-このAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED以外では一度も経験が無く、このレンズだけが特別壊れやすいように思う。
5年前の1度目のSWM交換時は修理後に盛大な片ボケ状態で戻ってきたので再修理をお願いして元に戻ったが、2度目の今回もSWM交換後に左端の解像が悪くなっていた。

今回のSWM交換修理後
これが片ボケが疑われる画像だが、石垣の右側はOKだが左端はボケているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO100 F8.0
45MP 元サイズ画像

これもまたかなり微妙なところだが、左右にある投光器や、下の水面の石垣を見ると左の方がぼやけているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F8.0
正直、これはかなり微妙なレベルで、経験上はこの程度だとおそらく正常範囲内だといって戻ってくる。そして予想通り正常範囲内ということで戻ってきたが、ここまでは想定内だ。実はこういう場合でも、黙って直してくれていることがある。新聞紙と鏡を使ってチェックしてみると近距離では完璧で、F2.8解放で隅々までよく解像しており片ボケも無い。

以下再修理後
先日開業した東京ミッドタウン日比谷にて。絞りF2.8解放でよく解像している。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO100 F2.8
日比谷公園にて。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO200 F2.8
45MP 元サイズ画像

片ボケと周辺の解像をチェックするために平面を相手にマイクロ60を執拗にいじめ倒す。F5.6だが水平方向については端までよく解像している。片ボケは無いように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO200 F5.6
45MP 元サイズ画像

これはシャッターボタンを右下にして縦位置を撮影している。左は問題ない。右が怪しい気がするが気のせいか。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F5.6
45MP 元サイズ画像


完全逆光ながら、ビル上の文字の看板がフレアもパーフリも出ず、非常に良く写っている。この構図では上下はわからないが、少なくとも左右のピント差は無く両端ともよく解像している。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F5.6
45MP 元サイズ画像

F2.8解放にて。これは可も不可も無い。ピントは合っており、AF微調整は+-0でとくに問題ない。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F2.8
45MP 元サイズ画像

この辺の石垣は撮影距離が手頃で片ボケのチェックにちょうどいい。細部は中央に比べ左右端のコントラストはやや低くなり解像感は落ちるがこのレンズでは許容範囲だろう。コーナーの木々の葉も良く解像している。やや遠距離だが、水面あたりの石垣で左右を比べてみるとピントに差は無いように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO640 F8.0
45MP 元サイズ画像


画像下端、堀沿いを歩く人々や車、街路樹のあたりは像の滲みがある。これで精一杯なのか。これでいいのか。こんなもんか。ここらへんになると、ピント位置のコントロール次第で解像も変わってくる。これは位相差AFなのでLVのコントラストAFだと違いがあるかもしれない。まあ、このレンズは元々こんな写りをするときもある。天気も悪いしISO感度も高め、三脚も使っていない。再修理で調整し直してくれたのか本当に何もしていなのか正直わからないが、どうも直っているように見える。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO400 F8.0
45MP 元サイズ画像
共通データ:ピクチャーコントロール[SD]スタンダード:輪郭強調無し
Capture NX-D アンシャープマスク:半径=3, 適用量=80
ホワイトバランス=自然光オート
自動歪み補正=あり
ヴィネットコントロール=50

有楽町のガード下。この画像のみ現像時にトーンを細工した。
Nikon D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm 
f/2.8G ED ISO800 F5.6
45MP 元サイズ画像
ピクチャーコントロール[LS]風景
ガンマ=0.71
露出補正:+1/3

2018年4月16日月曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)

今回は、前回の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)」の続き。
「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」は2015年10月に発売されたレンズだ。昨年D850が発売されてから急に品不足となり、最近まで手に入りにくい状況が続いていた。このレンズの発表当時は、先代の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」にVRがくっついてサイズが大きくなっただけのものだと思っていたのだが、実は全然そうではないらしい。
左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)

最近になって先代のGタイプと今回のEタイプを設計したニコンの原田壮基氏と藤原誠氏が「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」についてお話されているインタビュー記事を読む機会があった。画質上の改善点について尋ねられた部分で原田氏は「ズーム全域での像面湾曲の減少と周辺画質向上」「広角から望遠までコマ収差の低減」「中間画角でもより高画素にマッチした、よりフラットな像面」だと語っている。

デジカメWatch「インタビューAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」
PHOTO YODOBASHI「BEST WISHES FOR ANOTHER 100 YEARS - レンズ設計者インタビュー」

発売から2年以上経っているものの、この二つの記事は見たことがなかった。そもそもこの新しいレンズは自分には高価すぎて完全にノーマークだったのだ。周辺画質の件はコマ収差について多く触れられているが、あの像面湾曲も直したと仰っているということで間違いないのか。にわかには信じられず、インタビュー記事を何度も何度も読み返した。
そして、海外のテスト記事を漁ってみたところ、ユーザーの側からも開発者が明かした改善内容を裏付ける結果が観測されていることが分かった。

Lensrentals.com "Nikon 24-70mm f/2.8 ED AF-S VR Sharpness & Optical Bench Testing"より
「ニコンは新しいレンズでデザインの選択をしました。デザインの選択は「ベンチテスターにとって素晴らしいものにしましょう」というものではありませんでした。彼らは、イメージフィールド全体で良好な解像度に交換するために、絶対的な最良の中心解像度をあきらめました。したがって、画像の1/3の中心では、古いレンズはMTFの結果が良いが、残りの部分では新しいレンズがはるかに優れている。」
「左右に非常に等しい鮮明さと、ズーム範囲全体で同等の鮮明さを持つフラットフィールドを持つ」
(Lensrentals.com:Roger Cicala)

Potography Life "Nikon 24-70mm f/2.8E VR Review"より
「新しいNikon 24-70mm f / 2.8E VRは、その前身と直接比較すると、わずかに悪い中心性能を示しますが、ミッドフレームとコーナー性能ははるかに優れています。その鮮明度は比較のためにはるかに均等に広がっており、風景や建築を撮影するのにもっと良いレンズになっています。これは、無限遠で被写体を撮影する場合に特に顕著です。」
「私がニコンに代わって言うならば、それは莫大な成果だ!実際、Nikon 24-70mm f / 2.8E VRは他の多くの単焦点レンズよりもコーナーは優れている。」
(Photography Life:Nasim Mansurov)

kenrockwell.com "Nikon 24-70mm VR"より
「この24-70は解放のf/2.8でも3600万画素の端々まで最高にシャープです。」
「2007年に導入された古い24-70mm f/2.8G(2007-2015)は、当時最先端だった1200万画素のカメラで撮影するには素晴らしかったが、今日の現代的なカメラでは、この新しいE VRレンズが明らかに優れています」
「これまでにニコンと他のものによって作られたミッドレンジズームでは最もシャープです。」
「ニコンのデザイナーは、ズームレンズの歪曲を抑えることをしないという引き換えに、コーナーでよりシャープネスを得ています。」
(Ken Rockwell)

その他のレビュー記事でも、先代Gタイプよりも周辺画質が向上していることが確認されている。
STEPHAN RUSSENSCHUCK "Hands on review: AF-S Nikkor 24-70 mm f/2.8E ED VR"
CAMERALABS "Nikon 24-70mm f2.8E VR review - Quality"
OpticaLimits "Nikkor AF-S 24-70mm f/2.8E ED VR (FX) - Review / Test Report - Sample Images & Verdict"
Nikon rumors "Nikon AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8E ED VR lens review"

大変だ。この間、D810をスキップしたのと、旧型Gについてはそれはそれで気に入って使っていたので、うっかり2年間以上も気づかなかった。これらが全て本当ならば、自分が望んだとおりの改良方向ど真ん中だ。8年前にGを手に入れた時に、「像面湾曲が酷い」と言ってここで散々こき下ろした自分の立場としては、何が何でもこの新型を手に入れなければならない。

また長くなったので続きは次回AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その3)にて。




2018年4月15日日曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)

先代の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」をD700の頃から使っている。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは、ニッコールのラインナップ上ではプロクラスの標準ズームという位置付けだが、何にでも使える万能ズームというわけではない。いわゆる「でっこまひっこま」的な不思議な性質を持つレンズだ。コントラストが高く力強い描写をし、ポートレートやスナップでは、暗部が引き締まった吸い込まれるような背景ボケに、ピント面の被写体が浮き出しているような立体感を紡ぎだす。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDにて (c)俺2010

このレンズは近~中距離の被写体を絞り開放付近で撮影する場合に非常に美しい写りをするが、一方でズームのワイド側は像面湾曲が顕著で、画面中央部から周辺へ向かうにつれピント面が急激に前ピンになる。このせいで、平面的に配置されている被写体に正対して向かう場合や無限遠を相手にする場合には、画面周辺は露骨にピンボケになってしまう。このレンズのワイド側を使う場合、画面全体にピントを合わせることはあきらめ、絞りの解放付近を使ったボケを生かした作図をするか、さもなくば、足元や左右に近景を配した一点透視図法のような構図を工夫することになる。しかしながら、このレンズのフィールドカーブは現実にとり得ることができる構図とはかけ離れており、多くの場合には不都合にしか作用せず、風景などでは周辺の前ピンを被写界深度で誤魔化すために、うんと絞り込んで使うしかない。ところが、一般的なレンズでは解放から3段も絞れば周辺まで画質が安定するのが普通なのに対し、このレンズの場合、画面中央部にピントを合わせると1200万画素のD700でさえ、F8にまで絞り込んでも画面周辺部を被写界深度内に入れることが難しかった。(参考:2010年の記事
当時の1200万画素のボディでは、F8まで絞り込んだ上にフォーカスを僅かに後ピン方向へコントロールするか、回折の影響をなんとか許容できるF11まで絞り込むことで、画面中央部と周辺部の画質差があまり目立たないようにすることはできたが、このレンズは2007年当時の1200万画素のボディを想定し、ギリギリの収差バランスで設計されたのだろう。
高画素化された以降のボディでも、このレンズは被写体がピント面にある限りは解像力やコントラストは抜群なので、構図次第では充分使うことができる。だが、高画素機では遠景や平面を相手にする機会も一段と多くなり、このレンズの極端な性格はそういった被写体にはまったく適していないことがはっきりと表れるようになった。もちろん、単焦点レンズであってもこのあたりの焦点域では、フルサイズ画面の端から端までキッチリ解像するレンズを見つけるのは難しいし、ズームレンズにそれを求めるのは常識ではない。日常のすべての被写体が平面や無限遠であるというわけではないし、そんな構図ばかりが良い写真であるはずもない。だが、個人的には高画素機のD800EやD850を手に入れてからは、レンズが結ぶ細密な像を画面全体の隅々にまで充満させるという遊びにのめり込んでしまい、近頃にあっては単焦点レンズや望遠系のレンズなどを使うことが多く、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの出番はほとんど無くなっていた。
左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)

長くなったので、続きは次回AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)にて。

2018年3月20日火曜日

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi / D850で赤外写真

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi 

小型の自由雲台SUNWAYFOTO 「FB-28iDDHi」を入手。ベルボン「UTC-63」三脚に付属している自由雲台「QHD-S6Q」と交換してみることにした。現在、QHD-S6Q雲台にはMENGSのパノラマクランプ「PAN-C1」を乗せて使っているが、この組み合わせをFB-28iDDHiに変更することで、高さを45mm低く、重量を220g軽くすることができる。

SUNWAYFOTO FB-28iDDHi

左:SUNWAYFOTO FB-28iDDHi (重量247g・高さ78mm)
右:ベルボンQHD-S6Q+MENGSパノラマクランプ「PAN-C1」(重量467g・高さ123mm)

FB-28iDDHiの最大耐荷重はスペック上は6kgとなっているが、取説では最大耐荷重の5分の1程度で使用することが推奨されており、実用上もその程度と思われる。FB-28iDDHiは、同社のFB-28iの上部がDDH-06パンニングクランプになっているモデルで、クランプや水平パンのロックはMENGSよりもこちらの方がしっかりしている。届いた当初は、DDH-06のパンロックを解除した状態でのパン操作が非常に固く、自分で少し調整する必要があった。DDH-06パンニングクランプを雲台から取り外してみるとパンの固さは無く、スムーズに動かすことができるため、雲台に取り付ける力でDDH-06が圧迫されているようだ。DDH-06を取り外した状態で、上部のリング状のネジをコイン状の工具を使ってほんの少し緩めてから、元のM4ネジで雲台にしっかりと取り付けなおしたところ、パンの固さは無くなりスムーズに回転させることができるようになった。

FB-28iDDHi雲台の底部は3/8”(大ネジ)になっている。1/4”ねじ(小ねじ)への変換アダプターの裾を逃がす凹みのような構造はあるが、付属している変換アダプターを取り付けるとアダプターの裾が出っ張ってしまい、三脚に取り付けると隙間が空いてしまう。いくつか別の変換アダプターを試してみたがどのアダプターを使っても出っ張らずに取り付けられるものは無かった。SUNWAYFOTOのレベリングベース「DYH-66i」に付属していた被せ式で裾の無い変換アダプターも試してみたが、雲台側のネジ穴が浅く、アダプターが底に支えてしまう。裾の無いイモネジ型の変換アダプターもどこかにあったと思うが見当たらない。

UTC-63三脚側はこんなふうになっている。せめて三脚側に変換アダプターの裾を逃がす凹みがあればいいのだが、今回はそれが無い。

あまりやりたくないが、以前こんな時に使ったことのあるでっかいワッシャーがある。仕方がないのでこれを使おう。

変更前

ベルボン UTC-63+QHD-S6Q+MENGS PAN-C1

変更後

ベルボン UTC-63+SUNWAYFOTO FB-28iDDHi


UTC-63三脚の脚をひっくり返して収納する際に、FB-28iDDHi雲台はうまく脚の隙間に入れることができる。脚は完全に閉じることができ、運搬時にグリグリ強く当たるような箇所も無い。

ベルボンUTC-63三脚にSUNWAYFOTO FB-28iDDHi雲台を取り付けたものは、構造がシンプルになり見た目はスマートになっている。元のQHD-S6Qの方がサイズも大きくしっかりした雲台なので、FB-28iDDHi雲台に交換することによる強度的なメリットは無い。雲台自体が小型なので高さが低く抑えられ、剛性感の低下をなんとか免れているという形になっている。それでもこの雲台に交換したのには、二つ目的がある。一つはMENGS PAN-C1のクランプとパノラマ回転台の固定力に不安があったことだ。この点についてはFB-28iDDHの方が明らかに良い。もう一つの目的は、パノラマ回転台と水平パン機構の両方を持つ自由雲台であれば、例の水平出し操作を雲台単体でおこなうことができることを実践するためだ。

例の水平出し操作とは?

この方法では、自由雲台を使う場合に最大のストレスとなる左右の微妙な傾き調整を、簡単でスムーズに行うことができる。カメラの重量を手で支える必要がなく、手を放してもガクンと倒れる心配がない。ボールを半締めにしたままカメラを動かす場合のようなバックラッシュを生じることもない。FB-28iDDHiでこの操作をやってみたところ、充分快適に行うことができる。


D850で赤外写真

D850で赤外フィルターを初めて使ってみたが、D850はD800Eよりも約一段分、赤外感度が高いことがわかった。IR-76フィルター使用時は、晴天でISO800・F8・30秒がD800Eでの標準露出だったが、D850だとISO400で同じくらいの明るさに写る。SC-72フィルターの場合はこれよりもシャッタースピードを一段上げた1/15秒が適当だ。また、SC-72フィルターを使った際の発色がD800EとD850では少々異なることも分かった。SC-72フィルターの画像は現像時に雲の影部分や舗装路面をポイントしてWBを合わせるが、D800Eの場合この方法で晴天時の青空を水色にすることができ、植物の緑や路面の色合いも肉眼に近い色相になる。
D800EでSC-72フィルターを使用した例

同じ方法でWBを調整したD850の画像では、植物の緑や路面のグレーはあまり変わらないが、晴天の空がどぎつい青紫色になる。IR-76フィルター使用時の発色はあまり違いは無いが、D850の方がモノクロ味がやや強く、セピア~無彩色の落ち着いた色調になるようだ。赤外域の感度分布がこれまでのセンサーとは異なっているのかも知れない。なお、D800Eと同じくD850でもピント補正をするのはIR-76の場合だけで、SC-72ではフィルター無しと同じピントで位置で撮影している。

以下D850にて。
フィルター無し:ISO400 F8, 1/1250秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒

フィルター無し:ISO400 F8, 1/1000秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒

SC-72フィルター:ISO400 F8, 15秒

フィルター無し:ISO400 F4, 1/2500秒

IR-76フィルター:ISO400 F8, 30秒
Nikon D850, Nikkor-UD Auto 20mm F3.5